音楽のヤマハが「あえて聞こえにくくする」謎音声 オフィスや病院で導入進む、逆転の発想:アセットの「再定義」(1/6 ページ)
楽器メーカーとして知られるヤマハが手掛けるのは、「音を良くする」のではなく「あえて聞こえにくくする」技術だ。会話漏れを防ぐスピーチプライバシーシステムは、病院や企業で導入が拡大。コロナ後のオフィス環境の変化を追った。
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ヤマハと聞いて、どんなイメージが浮かぶだろうか。バイクメーカーという印象を持つ人もいるかもしれないが(バイク事業などはヤマハ発動機が担う)、やはり音楽や楽器のトップブランドとして知られている。
世界的にも高い評価を得るヤマハのピアノや電子楽器。子どものころに「ヤマハ音楽教室」に通っていたという人も多いかもしれない。
“音の楽しみ”を届けてきた「音楽のヤマハ」が、「音を良くする」のではなく、「あえて聞こえにくくする」サービスを提供していた。
こう聞くと、一瞬、不思議に思う読者もいるのではないか。「あえて聞こえにくくする」とは一体、どんなサービスなのか。聞こえにくくすることで、ヤマハはどのような価値を提供しようとしているのか。
日常に意外と多い「聞かれたくない」シーン
在宅勤務が定着し、久々に出社したオフィスで、数週間ぶりに顔を合わせた同僚と立ち話をしていると――。やけに静かなオフィスに自分たちの声が響き、やや気まずくて口を閉ざしてしまう。
あるいは病院の受付をしているとき。体の症状など、込み入った会話の内容が待合室にいる人にまで漏れているようで、あまり良い気持ちがしない。
日常において、こうした「聞かれたくない」シーンというのは少なくない。こうした場面で、ヤマハの「あえて聞こえにくくする」技術が力を発揮する。
ヤマハが提供する「スピーチプライバシーシステム」は、その名の通り、会話の内容が第三者に漏れ聞こえてしまうことを防ぎ、プライバシーや機密情報を守るための製品だ。病院や薬局、企業の会議室、シェアオフィスなどに導入されている。
「音を消す」のではなく、「内容を聞き取りにくくする」のがポイントだ。
こう聞くと「ノイズキャンセリング」を思い浮かべる人もいるだろう。
ノイズキャンセリングは、空気を振動させながら波として伝わる音に対して、正反対の波形をした音を作り、それらをぶつけ合うことで音を打ち消す技術を指す。イヤフォンなど限定された空間で広く活用されているが、人の話し声のように刻々と変化する音を、広い三次元空間で打ち消すことは技術的に簡単ではない。
そこで、ヤマハのスピーチプライバシーシステムが採用するのは「サウンドマスキング」という概念だ。これは「音を消す」のではなく、漏れ聞こえる会話などに特殊な音を被せることで、「音の意味を分からなくする」という考え方だ。音をカモフラージュすることで、比較的小さな音量でも会話の内容を不明瞭にできる。
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