レクサスが求めた「街の石材店」 「捨てる石」がブランドになった逆転の発想:アセットの「再定義」(4/4 ページ)
墓じまいの広がりなどで墓石市場が縮む中、稲垣石材店は石の器ブランド「INASE」を新たな柱に育てている。器づくりで培った加工技術は、レクサスの作品にも用いられた。
新たな柱への伸びしろと、業界の課題
かつて処分していた墓石の端材も、INASEの器に活用できるようになったことで、廃棄量は大きく減った。年間約10トン出ていた端材が、半分ほどまで減る年もあるという。
INASEの売り上げは会社全体のおよそ2割を占める。一方で、残る大半は今も墓石事業によるものだ。墓石市場が縮小を続ける中、一つの事業に依存し続けることには限界がある。そこで稲垣氏は、INASEの売り上げ比率を5割まで高め、墓石と並ぶもう一つの柱へ育てたいと考えている。
「どんな形であっても、石材店として会社を続けていきたい。そのためには、INASEを早くもう一本の柱に育てる必要があります」
その実現に向けて、採用に力を入れる。2025年4月には、美大出身の新卒をINASE担当の職人として迎え、製作は2人体制になった。ブランドは若い世代にも届くものになりつつあるようだ。一方で、長年培われてきた加工技術を次世代へどう継承していくかは、依然として大きな課題だという。
さらに、石材業界全体の縮小によって、石材加工を支える周辺産業も細り始めている。例えば、石を切断・加工するために欠かせない特殊な刃物や工具を製造する会社は年々減少し、職人が道具を自作して対応するケースもあるという。
なにより深刻なのが原石の供給だ。岡崎で石を採掘する業者は最盛期に150軒ほどあったが、いまは2〜3軒ほどまで減少した。採掘は危険を伴う上、以前ほど利益も見込めず、新たな設備投資もしにくい。石は山に残っていても、それを採掘する人がいなくなりつつあるのが現状だ。
品質だけを見れば、国産と外国産の石に大きな差があるわけではない。むしろ外国産の方が安価な場合も多い。それでも稲垣石材店がINASEで国産の石を積極的に使うのは、地元や国産の石に、その産地のストーリーまで含めてこだわりたいという客がいるからだ。
稲垣氏は、石材店の役割は石を加工して販売することだけではないと考えている。
「石や石材店のことは、普通に暮らしているとなかなか知る機会がありません。だからこそ、自分たちから発信していかなければ担い手も減ってしまう。そのことも、今の石材店が向き合うべき課題の一つだと思っています」
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