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死亡率4割のヒラメが1匹も死なず 温泉の微生物で「化粧品メーカー」が畜産・水産市場を切り開くまで(2/4 ページ)

死亡率4割だった養殖ヒラメが4カ月間1匹も死なず、インドでは子牛の下痢発症率が0%に――。別府温泉で見つかった微生物を武器に、化粧品メーカーから畜産・水産、医療へと事業を広げたSARABiO温泉微生物研究所の成長戦略を追う。

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「論文の数字では市場は動かない」 20羽の鶏を飼育し、実証試験

 転機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大だった。RG92が感染に関わる因子を53%低減し、感染リスクを抑える可能性を示した研究成果が経済誌で報じられた。それを見た大手配合飼料メーカーの研究者から問い合わせが入ったのだ。

 研究者は「腸内環境の乱れによる炎症を抑える」というRG92のメカニズムに着目し、「人だけでなく、動物の『腸内炎症』を抑えることにも活用できるのではないか」という仮説を立てた。

 この仮説をきっかけに、SARABiO温泉微生物研究所は2021年、RG92を家畜用飼料として登録し、畜産・水産分野への展開を開始する。


家畜用飼料としての可能性も生まれた(画像:ゲッティイメージズより)

 背景には、畜産業界が抱える課題があった。食用家畜は、効率化のために大量の飼料で一気に育てられるため、腸内環境が乱れやすく、炎症や感染症を起こしやすかった。そのため、病気の予防や成長促進を目的に抗生物質が使われていた。一方、出荷時に薬剤が残らないよう、出荷前には休薬期間も定められていた。抗生物質に頼らず健康を維持できる技術への期待は大きかった。

 しかし、新たな市場を切り開くのは容易ではなかった。科学的な裏付けだけでは、生産者は動かない。水産では実証試験に協力してくれるヒラメの養殖業者が現れたものの、畜産では鶏や豚での試験を依頼しても、なかなか引き受けてもらえなかった。

 「生産者が見るのは論文の数字ではありません。『目の前の家畜の状態が本当に良くなるのか』という結果なんです」(濱田氏)

 そこで同氏は「自分たちで飼って証明する」という決断を下す。2022年春、研究所の敷地内で20羽の採卵鶏(食用卵を生産する目的で品種改良された雌のニワトリ)を飼い始めた。


敷地内に迎えた20羽の採卵鶏が、化粧品会社をバイオテック企業へと変えていった(画像:SARABiO温泉微生物研究所提供)

 RG92を配合したエサを与え、卵の状態や腸内環境の変化を記録。現場が納得するデータは、現場でしか得られない――。その発想が、同社を化粧品メーカーからバイオテック企業へと変える転機になった。

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