実務能力は高いのになぜ? 「部下が辞めていく」上司と構造的な問題点(3/3 ページ)
卓越した実績を引っ提げて管理職に昇進した人物のチームから、なぜか人が次々と辞めていく。多くの企業で繰り返されるこの光景は、上司個人の資質の問題として片付けられがちだが、現実にはもっと構造的な理由がある。
「管理職にならなければ年収が上がらない」 優秀な技術者の不幸
この構造は、特に技術職として評価されて管理職になった場合、企業にとっても本人にとっても不幸な結果を招きやすい。
高い専門性を有した技術者は、その技術力に誇りを持ち、高め続けたいと考える人が多い。しかし、管理職にならない限り年収が上がらないから、という理由でマネジャーになれば、本人にとっては、それまで専門業務にあてていた時間を調整業務や部下のケアなどで奪われることになる。
さらにマネジメントは未経験であるために、業務に手間取ることも増えるだろう。結果的にマネジメントはうまく機能せず、部下は辞めていく。やがて本人も、管理職業務に時間と労力を取られている働き方に見切りをつけ、本来の技術職に専念したいと自ら会社を去る。企業は優秀な技術者とマネジメント機能を同時に失うことになる。
企業が打つべき2つの手
企業がまず検討すべきは、役割の分離だ。特に技術職などにおいては、評価や育成を担う「エンジニアリングマネジャー」と、技術判断に専念する「テックリード」を分ける。
さらに、マネジャーにならなくても同等の年収が得られる、「スペシャリスト」としての役職・ミッションも整えておくべきだ。そうすれば、優秀な技術者が管理職になったら辞めるという負の循環は少なくなるだろう。
また、マネジャーになった後、マネジャーとしての適性がなければ不名誉な降格ではなく、名誉ある移行としてプレーヤーに戻れる制度も検討すべきだ。
次に、登用時の「アンラーニング(学びほぐし)」を検討すべきだ。プレーヤーとマネジャーは「ほぼ別職種への転職」であるという現実を明示し、正解のない対人課題に向き合う必要性に加え、その基礎を学んでもらう。
優秀なプレーヤーは、そのポジションに適性があったのであり、それはマネジャーの適性とは全く別物だ。管理職に課題を抱えがちな組織は、まず自社の制度そのものが「機能不全の上司」を生み出していないかを検証すべきである。制度を見直すことこそが、優秀な社員たちを、そして管理職本人をも守る道でもある。
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