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売上の3割を捨てた「下請け町工場」 自社ブランドのコーヒーフィルターが世界80の国・地域で求められる理由(3/5 ページ)

売上の3割を失う覚悟で、OEM中心の事業から自社ブランドへと舵を切った大分県の町工場。社長自らが世界を飛び回り、コーヒーフィルターを世界80の国・地域へ広げた。下請けから脱し、海外でブランドを育てた方法とは。

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コロナ禍が追い風に 自宅でのコーヒー需要が伸長

 自社ブランドを世界に発信するにあたり、中塚氏は自らがブランドの「顔」となって製品やコーヒーの知識を直接伝える道を選んだ。資金力のある大企業のような広告は打てない。だからこそ、自ら現地へ足を運び、ブランドの考え方まで届けようと考えた。

 自社ブランドを立ち上げると、中塚氏はすぐに海外へ向かった。国内では品質への評価をすでに得ており、成長の余地が大きいのは海外市場だと考えたためだ。

 背景には、世界的なコーヒー文化の変化もあった。2000年代半ばから、豆の産地や品質にこだわる「スペシャルティコーヒー」が広がり、ハンドドリップへの関心が高まっていた。ただ、当時の三洋産業には海外での実績がほとんどなく、ゼロからの挑戦だった。

 最初のきっかけは、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)主催の展示会だった。来場したインドネシアの業者から「自国でCAFECを販売したい」と申し出があり、これが初の海外代理店となった。

 さらに2017年には、米国シアトルで開催された、世界最大級のコーヒー展示会にも足を運んだ。生豆の生産者や輸入商社、焙煎業者、機器・器具メーカー、そして各国でそれらを扱う流通業者など、コーヒー関係者が世界中から集まる展示会だ。

 自社ブースを出展したわけではなく、出展企業の中からCAFECを扱ってくれそうな約20社の代理店に事前にメールを送り、返事のあった8社のブースを訪ねた。最終的に1社と代理店契約を結び、本格的な海外展開が始まった。


セミナーでは、パートナーや現地バイヤーに向け、正しいコーヒーの抽出知識を伝える(画像:三洋産業提供)

 2019年の夏には英語版の公式Webサイトを公開。徐々に海外での販路は拡大していたものの、この時点では、まだ世界のコーヒー消費量の約3割(参照:国際コーヒー機関「2019/20年度統計」PDF)を占める欧州市場からの引き合いはほとんどなかったという。

 転機は、その半年後に訪れた。

 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界各地でカフェが休業し、自宅でハンドドリップを始める人が増加した。バイヤーや愛好家がインターネットで情報を探す中、CAFECの英語版サイトにたどり着くケースが相次ぎ、これまで接点のなかった欧州を中心に問い合わせが急増した。

 「別府湾のベタなぎにサーフボード(Webサイト)を置いておいたら、コロナをきっかけに勝手に波が来ました。あんまり偉くない話ですが」と中塚氏は笑う。もちろん、偶然だけではない。2019年に英語版サイトを整備していなければ、この波をつかむことはできなかっただろう。

 コロナ禍は、同社にオンラインセミナーという武器も授けた。中塚氏は別府から世界各国の代理店に向けて、ハンドドリップの実演をオンラインで行った。お湯を注ぐと、新鮮なコーヒー粉がドーム状にふくらむ。その様子を見た参加者からは「それは魔法なのか。誰が淹れても同じようになるのか」と驚きの声が上がった。

 エスプレッソ文化が主流の欧州などでは、ハンドドリップそのものに対するなじみが薄く、コーヒー粉が膨らむ様子を初めて見る人も少なくなかった。新鮮な粉と適切に設計されたペーパーフィルター、この2つがそろえば、特別な技術がなくても、おいしいコーヒーを淹れられる。そのことを実演で示すことで、言葉の壁を越えてCAFECの考え方が伝わり、新たな取引へとつながっていった。

 当時「コロナ禍が収束したら、必ず来てほしい」と、各国の代理店から招かれたという。現在では、多い月で2回、ブランド名入りのユニフォームを着て、トレードマークの眼鏡姿で海外を訪れ、展示会やセミナーで自ら実演する。

 そこで伝えているのは、器具の使い方だけではない。「コーヒーは生鮮食品である」という考え方から、おいしく淹れるための知識まで含めて届けることこそが、CAFECというブランドの価値だと考えているからだ。


中塚氏のドリップ実演を一目見ようと、セミナーや展示会には、遠方からも多くの人が集まる(画像:三洋産業提供)

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