冷蔵で十分売れていたのに、なぜ「常温」? 「イシイのミートボール」が広げた新市場(4/4 ページ)
冷蔵のロングセラー商品があるのに、なぜ石井食品は常温ミートボールを投入したのか。背景には、防災をきっかけに「食べる場面」を広げる狙いがあった。ベビー用品店など新たな販路を開拓した戦略を探る。
SNSで広がる「無添加調理」への共感
新たな食シーンを開拓する一方で、石井食品はSNSを通じた消費者との接点づくりにも力を入れている。広報チームが日常的に消費者とコミュニケーションを取る中で特に反響が大きかったのが「無添加調理」に関する発信だ。
同社のXで、1995年から無添加調理に取り組み始めたことを紹介した投稿には、6500件以上の「いいね」と100件を超える返信が寄せられた。
返信欄には「ミートボール買う時はいつもイシイのです! それまで添加物はあまり気にしていませんでしたが、ふと色々な商品のパッケージ裏を見た時あまりにも書かれてる文字が多く、こんなに必要なんだろうか? と疑問になってから色々調べるようになりました」「ミートボールを定期的に子供のお弁当に入れてます。安心出来る食べ物をありがとうございます。これからも買って応援し続けます」といったコメントが寄せられた(2026年7月21日時点)。
「無添加調理に価値を感じてくださる方や、『イシイのミートボールが大好き』と伝えてくださる方が多く、みなさんの熱量を感じます」(池田氏)
石井食品が掲げる無添加調理とは、製造過程で食品添加物を使わず、素材本来のおいしさを生かす考え方だ。素材の味がミートボールの味や食感に影響しやすいため、同社では専門部署の担当者が産地へ足を運び、素材を確認・選定している。
子どもの頃、弁当のおかずとして同社のミートボールに慣れ親しんだ世代の中には、親になったことで原材料や食品添加物への意識が変わった人もいるだろう。
自分の子どもに食べさせるものを選ぶ立場になり、かつて何気なく食べていた商品を「無添加調理」という視点から捉え直す。長年続けてきた石井食品の取り組みが、消費者のライフステージの変化によって再び評価されている面もありそうだ。
こうした食シーンの広がりは、石井食品が目指す事業の方向性とも重なる。同社は2030年に向け、弁当用途など特定の食シーンにとどまらず、生活全体を支える食の提案を強化している。
今後は「おつまみミートボール」のシリーズ展開も検討中だ。フレーバーを変えるほか、パウダーを加えて味変できる商品なども構想中だという。定着した味を大きく変えるのではなく、防災やアウトドア、家飲みへと「食べるシーン」を増やしていく。ロングセラーだからこそできる、新たな市場の広げ方といえそうだ。
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