「IT化か、水道を止めるか」 “ブラック部署”と呼ばれた曽於市水道課が挑んだ、金なし・人なしの現場DX(2/3 ページ)
技術職員はわずか3人。人手不足が深刻化する中、鹿児島県曽於市の水道課は、現場主導のDXで時間外対応を約75%削減した。予算も人材も限られた自治体が実現した改革とは。
コロナ感染で点検業務が止まりかけたことも 「委託先任せ」の危うさ
こうして、これまで技術者の経験や記憶に頼っていた情報をクラウドに集約することで、「人に依存する業務」を「誰でも参照できる業務」へと変えていった。大峯氏が目指したのは、技術職員でなくても初期対応ができる仕組みづくりだった。
家電が故障した際、専門知識がなくても取扱説明書の「困ったときは」を開くのと同じ感覚を、市役所内に持ち込んだ。漏水や設備警報が鳴った際、まずは事務職員にクラウド上の説明書や写真を閲覧してもらい、現場の一次確認を担当してもらう。これにより、限られた技術職員が現場へ出向く回数を減らすことを目指した。
さらに、この仕組みは民間事業者や近隣自治体との連携にも広がっている。
きっかけはコロナ禍だった。点検業務を委託していた民間企業のスタッフが全員感染し、点検業務がストップしかけたのだ。
「委託先の作業者が、どんな作業をして、何を記録しているのか、私たち職員は把握できていませんでした。点検業務がストップしてしまい、これはまずい――となりました」
「委託先任せ」の危うさを痛感した大峯氏は、委託業者の点検作業に同行して写真や動画を撮影して点検時のチェックポイントをマニュアル化した。民間企業も人手不足に悩む中、官民で同じ指標と監視画面を共有することで、持続可能な点検体制を構築した。
自治体同士の連携も増えている。近隣の鹿児島県志布志市や大崎町と連携し、各自治体の倉庫にどの資材がどれだけあるかをクラウド上で相互に可視化した。
水道設備で使う部品は種類が多いため、これまでは自らの市で該当の部品を保有していない場合は、他自治体に在庫があるか電話で確認し、現場対応と在庫探しの双方に追われるストレスがあったという。
現在では「めったに使わない特殊資材は分担して保管し、システムで情報を共有して互いに使用する」という運用が定着。自治体の枠を超えた共同管理を実現している。
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