ファイターズの“熱狂を逃さない”データマーケティング エスコンフィールドに顧客が「試合+1.5時間」も滞在するワケ(1/2 ページ)
「エスコンフィールドHOKKAIDO」の2025年の観客動員数は、459万人(前年比10%増)と過去最高を記録した。会場では、観客が試合開始よりも早く来場したり、試合後に次回の来場の予定を立てたりする裏で、同社が公式アプリをはじめとする“デジタルの接点”で仕掛ける、さまざまな施策が見えてきた。
北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」(以下、エスコンフィールド)の2025年の観客動員数は、459万人(前年比10%増)と過去最高を記録した。2023年の開業から、右肩上がりの成長を見せる。
好調の背景には、緻密なカスタマージャーニー戦略がある。既存の野球ファン以外の新規層や、来場頻度が高くないライト層をコアなファンにするために、公式アプリ「北海道ボールパークFビレッジ公式アプリ」などで取得する顧客データ(独自顧客ID「F VILLAGE アカウント」)を活用し、ファン育成の“勝ちパターン”を分析。年に複数回来場する顧客の行動を把握し、次回来場につなげる有効なマーケティング施策の検討に生かしている。
参考:「外販」も視野に ファイターズ“大航海”を支える「デジタル戦略」の裏側
来場者数増や観戦チケットを含む売り上げ増に向けて、同社が重視するのが「来場回数」と「滞在時間」の2つの指標だ。
ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの発表によると、公式戦の平均試合時間「3時間12分」に対し、エスコンフィールドを含む複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」での平均滞在時間は「4時間52分」。来場者は、試合以外で1.5時間以上も、球場やその周辺施設で過ごしているという。
Fビレッジには、多様な飲食店に加え、サウナやアクティビティーがあり、それらの施設で試合前後の時間を過ごす来場者も多い。実際にエスコンフィールドを訪問すると、試合前後もにぎわっている様子が見られた。
それに加えて、会場では、観客が試合開始よりも早く来場したり、試合後に次回の来場の予定を立てたりする裏で、同社が公式アプリをはじめとする“デジタルの接点”で仕掛ける、さまざまな施策が見えてきた。
「試合前」に参加型ゲームコンテンツ 混雑分散の狙い
会場では、試合展開や会場でのコンテンツと、Fビレッジ公式アプリをリアルタイムで連動させた施策を複数展開している。ユーザーは来場時にアプリ上で「チェックイン」登録をすることで、さまざまなコンテンツに参加できる。
例えば、試合開始前には「しゃけまる放流タイム」と題した、来場者参加型のゲームコンテンツを実施している。
ユーザーは、Fビレッジ公式アプリとLINEアカウントを連動させることでゲームに参加できる。LINEのFビレッジ公式アプリから、スマホの画面上で公式キャラクター「しゃけまる」をタップすると、会場の巨大ビジョンにもしゃけまるが放流される仕組みだ。放流した数が多い上位のユーザーには、会場で利用できるクーポンなどを配布する。
しゃけまる放流への参加は、LINEの公式アカウントが入り口となる。ライト層にとってアプリの登録はハードルが高いと感じることがあるが、日常的に利用しているLINEは登録のハードルを下げる傾向がある。実際にファイターズ スポーツ&エンターテイメントでもライトなタッチポイントとしてLINEが機能し、会員登録の間口が広がっているという(編集部撮影)
このゲームは現在、試合開始約1時間前ごろに実施している。同社は滞在時間を伸ばすことで混雑の緩和を目指している。試合開始直前に来場が集中するため、しゃけまる放流を実施することによって、来場タイミングを分散させる狙いがある。
エスコンフィールドでは開業以来、球場へのアクセス問題が話題を集めている。北広島駅からエスコンフィールドまでのアクセスは、徒歩で約20〜30分、バスまたはタクシーでの移動がメインとなる。中でもバスの混雑が問題視されてきた。実際に北広島駅では、かなりの頻度・本数のバスが運行していたが、試合開始前、試合終了直後には、今も長い行列ができる。
しゃけまる放流の取り組みは、顧客のエンゲージメント向上だけでなく、試合前の混雑緩和施策としても機能しているようだ。
観客の熱量が高まったタイミングを逃さない
試合後の施策も強化しているという。試合に勝った日は、勝利確定後すぐに、アプリ上でファンクラブへの入会キャンペーンの案内や、勝利日限定で販売するグッズの案内を送付する。
例えば、ファイターズが勝利した日の試合終了後から翌日正午までにファンクラブに入会したユーザーに対して、オリジナルグッズをプレゼントするキャンペーンの案内などを送付。勝利確定後、ユーザーの熱量が最も高まっているタイミングに、リアルタイムで情報を提供することで、購入を促す狙いがある。
他にも、試合観戦後に次回の観戦に誘導するメッセージを配信したところ、チケット購入が最大10%上がった事例もあるという(参考:ファイターズファンはなぜこんなに熱狂する? その裏にある“緻密なデータ戦略”)。
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