ファイターズの“熱狂を逃さない”データマーケティング エスコンフィールドに顧客が「試合+1.5時間」も滞在するワケ(2/2 ページ)
「エスコンフィールドHOKKAIDO」の2025年の観客動員数は、459万人(前年比10%増)と過去最高を記録した。会場では、観客が試合開始よりも早く来場したり、試合後に次回の来場の予定を立てたりする裏で、同社が公式アプリをはじめとする“デジタルの接点”で仕掛ける、さまざまな施策が見えてきた。
顧客満足を支える「現場力」
リアルタイムでの施策を推し進める一方で、会場内で特徴的だったのがオペレーション改善に対する体制作りだ。
場内で緊急の対応が必要な事案やトラブルが発生した際などに、情報をリアルタイムで把握、共有できるよう、オペレーションルームを設置している。
また、XでFビレッジ公式目安箱「Fビレッジおじさん」(@FVillageOjisan)というアカウントを運営しており、ユーザーの投稿をリアルタイムで把握し、緊急度の高い情報はすぐに共有できる体制を取っているという。
他にも、会場内にたくさんのボランティアスタッフを配置。「こまっていませんか?」などと書かれたボードを持ったボランティアが会場を練り歩き、会場案内のサポートするなど、顧客が安全、かつ快適に過ごせるようさまざまな工夫を凝らす。
現状アプリのダウンロード数は85万件を超え、月間アクティブユーザーは30万人に上る。今年から、購入者が観戦チケットを分配する際に、同行者の会員登録を必須化するなど、アプリの利用前提での設計を進めている。
取材時、場内の飲食店や観戦中など、年齢問わず多くのユーザーがアプリを利用している姿を見かけた。アプリ前提の体験設計に移行する中でも、オペレーションの強化でユーザーの離反を防いでいく。
「失点防止」と「得点アップ」 両軸のアプローチ
日本生産性本部によると、顧客満足を高めていくアプローチには大きく「失点防止」と「得点アップ」の2つの要素があるという。
日本生産性本部:顧客満足とは:CS向上のアプローチと調査の活用参照
「失点防止」は安全、清潔、対応の丁寧さなど“当たり前品質”と呼ばれるものを指す。一方「得点アップ」は、感動体験の有無(※)や、ユーザーの期待を超える体験の提供などのアプローチを指す。
※日本生産性本部では感動指標を「びっくりした(良い意味で)」「うれしい」「楽しい」「興奮した(良い意味で)」といった項目で判断している
デジタル化を推し進めて「得点アップ」を狙うだけでなく、現場のオペレーション強化によって「失点防止」を徹底するエスコンフィールドとファイターズの取り組みは、顧客満足度とリピート率向上を目指すマーケターにとって参考になるだろう。
働く人、住む人のデータも取得
エスコンフィールド周辺では現在、新たにホテルやオフィスビル、居住地の開発が進む。2028年には新駅開業も控え、今後はさらに、野球観戦以外の目的でFビレッジを訪れるユーザーの増加が見込まれる。
通勤や通学でFビレッジに通う層に、いきなり野球コンテンツがメインの公式アプリや「F VILLAGE アカウント」の登録を促すのは、ハードルが高い。まずは公式LINEなどを活用しながら、ライトな接点を強化していく方針だ。
担当者は「今後はFビレッジ周辺やエスコンフィールド内で働く人も増えると考えており、そういった方々のデータも管理しながら、マイル(ポイント)を貯められるインセンティブ設計なども検討したい」と展望を語った。
ダイハツ、旭化成、NOT A HOTELなど登壇:
無料セミナー「ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏」開催!
ITmedia デジタル戦略EXPO 2026 夏では、各分野の第一人者や企業の現場でビジネス変革に取り組むリーダーの声を通じて、経営×IT×現場のコラボレーションで全社変革を進めるヒントをお届けします。
AIを活用したデジタル戦略が必須となる中、ダイハツ工業や旭化成、NOT A HOTELなどビジネス変革に取り組む企業の「当事者の声」を通じて、現場のリアルな課題解決方法を探ります。視聴登録はこちらから。
- 開催日:7月8日(水)〜8月5日(水)
- 形式:オンラインセミナー
- 参加費:無料
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「外販」も視野に ファイターズ“大航海”を支える「デジタル戦略」の裏側
ファイターズの新球場「エスコン」には、多くの試合がある日もない日も多くの来場者が訪れる。その背景には、顧客IDを活用した1to1コミュニケーション戦略がある。その取り組みは、野球業界にとどまらない、スポーツ業界のスポンサービジネスに拡張をもたらす可能性を秘めている。
ファイターズファンはなぜこんなに熱狂する? その裏にある“緻密なデータ戦略”
エスコン開業以降、ファイターズの勢いが止まらない。新球場「エスコン」の魅力にとどまらない、同社の“緻密なデータ戦略”に迫る。
「普通に満足」だけでは、もう選ばれない? ユニクロ、セコマの事例にみる「感動のツボ」の設計
顧客満足度を高めるうえで重要なのは、単に不満をなくすことでもなければ、やみくもに感動を演出することでもない。「極端な満足」を得るために、顧客との関係性に合わせて体験を設計していくことだ。
「ナーチャリングは限界」に “購買グループ”の「予兆」を掴む、具体的な方法【BtoBマーケの新常識】
「マーケティングが育成したリードを営業へ引き渡し、商談化する」という従来型のGTM(Go-To-Market:市場進出戦略)が通用しなくなっている──米Forresterによる指摘が、注目を集めている。激変するBtoBマーケティングの新常識を、シンフォニーマーケティングの庭山一郎氏に聞いた。


