なぜ、牛丼チェーンは“牛丼以外”で勝負するのか すき家、吉野家、松屋、それぞれが狙う新たな市場とは?:小売・流通アナリストの視点(1/6 ページ)
牛丼チェーンが相次いで牛丼以外の業態に進出している。その狙いは何なのか?
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筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと)
みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。
主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
すき家は7月から、牛丼を値上げした。牛肉などの原材料費や人件費、光熱費の上昇を受け、牛丼「並盛」は450円から480円へと引き上げられている。
これだけ聞くと、よくある外食チェーンの値上げの話に思えるかもしれない。しかし、すき家の場合はやや事情が異なる。
すき家は2025年3月、異物混入事件の発生を公表し、全店を数日間休業して安全対策を徹底した。
図表1は、牛丼大手各社の既存店客数の推移を示したものだ。異物混入事件を公表した2025年3月以降、ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショーHD)の客数は前年割れに転じ、同年4月には前年同月比16%減にまで落ち込んだ。その後、少しずつ改善したもののなかなか前年並みには戻らず、9月には牛丼を30〜40円値下げする異例の対応に踏み切ったのである。
外食業界では値上げが常態化していたため、この値下げは「牛丼戦争の再来か?」とまで報じられた。しかし実際には、異物混入事件で落ち込んだ来店客数を回復させるためのおわびの意味も込めた施策だったと見るべきだろう。
値下げ後にすき家の客数は徐々に回復し、前年を上回る状態を継続できるようになったのは2026年2月だった。4月以降は異物混入事件前の水準を十分に上回るようになり、7月に値上げに踏み切った形だ。ただし、今回の値上げは単なる価格引き上げというより、異物混入事件前の価格水準にようやく戻せたと捉える方が実態に近い。
かつて牛丼業界の3番手だったすき家を擁し、現在では業界トップの売上高1.2兆円企業にまで成長したゼンショーHD。急成長を評価される一方で、さまざまな批判や課題も指摘されてきた。
ゼンショーHDは、どのようにして現在の規模まで成長したのか。そして、牛丼各社は今後どのように成長しようとしているのか。牛丼大手3社の今後の戦略を見てみたい。
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