居酒屋の倒産件数が増えているのに、なぜワタミの「鳥メロ」は好調なのか 約6年ぶり新規出店の勝算:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)
コロナ禍で出店戦略を見直してきたワタミだが、直近では居酒屋業態が好調だ。その背景を探る。
今後は出店戦略がより難しくなる?
東京・大井町にある「和民のこだわりのれん街」(2023年10月オープン)は、2026年3月に駅前の商業施設「大井町トラックス」が開業して以来、波及効果で前年より3割ほど売り上げが伸びており絶好調だ。 しかし、この店も手作りにこだわるので単価が上がり、さまざまな業態を集めているため広いスペースが必要になる点が悩ましい。多店舗化は現実的でないだろう。 むしろ、新商品の開発や商品の改良をこの店で行い、顧客の反応を確認して鳥メロやミライザカに出す「実験店」の役割を担っている。
ワタミの居酒屋では、食材をメーカーから購入していたものを、手作りにどんどん戻しており、調理のスキルが上がっている。それが好調の理由の1つでもある。
居酒屋以外の外食では「サブウェイ」が相変わらず好調。既存店売上高が68カ月連続で前年同月を超えている(6月時点)。 5月に発売した期間限定の「メキシカンミートタコス」など3種のタコスが、発売1カ月で50万食に達するヒットを見せた。現在は、夏の暑さを辛さで乗り越える趣旨で「タンドリーチキン」と「シラチャーグリチキチーズ」をシーズンの新商品として販売している。
アメリカンカジュアルダイニングの「TGIフライデーズ」では、7月31日に新宿歌舞伎町で新しい旗艦店をオープンした。105席の大箱だ。 現状、国内14店を展開しているが、2034年までに30店を一等地に出していく方針だ。
ワタミの居酒屋は若者や高齢者の酒離れ、企業などの大規模な宴会が縮小気味にもかかわらず、ニーズをうまく捉えて堅調であり、十分に伸ばしていける潜在力を持っている。 しかし、出店したい場所の物件が塞がっていて、なかなか店舗数を伸ばせないジレンマを抱えている。
そうした中でも、鳥メロは出店が最もしやすく、顧客単価も2500円ほどと手頃。今回の立川の新店が成功すれば、同様な乗降客数30万人ほどの駅前への出店の目途がつく。
今後、ワタミではワタミファームの有機野菜を活かしたサブウェイを事業の柱として考えている。外食ではTGIフライデーズなど他にも好調な業態があり、社員が独立したマスターフランチャイズを中心に、フランチャイズでの出店も積極化していく方針だ。
祖業である居酒屋も順調であり、まず鳥メロの店舗数回復に着手。急がず慎重に適地を見極めていく方針だ。居酒屋事業のV字回復への試金石である、立川駅南口店の今後の動向が注目される。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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