客離れを起こす“残念な値上げ”の特徴 物価高時代でも“買わせる”「値付け」の方程式: がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
止まらない値上げ。小売業も値上げの見直しを迫られるが、原価に応じた一律値上げでは客足を遠ざけてしまうかもしれない。値上げ時代に求められる新しい価格戦略とはーー。
一律値上げは、顧客から見える商品を外してしまう
原価が10%上がったから、全ての商品を10%上げる──。この方法は管理しやすい一方、生活者の価格認識を無視しています。
生活者は、店内にある数万SKU全ての価格を覚えているわけではありません。牛乳、卵、キャベツ、食パン、米、ペットボトル飲料など、購入頻度が高い一部の商品を通じて、「この店は安い」「最近高くなった」と判断します。
こうした商品を一般に「KVI」(キーバリューアイテム)と呼びます。KVIとは、生活者が店舗の価格水準を判断する際の基準になりやすい商品です。
価格弾力性は、価格変更に対して当該商品の販売数量がどれだけ変わるかを測ります。一方、KVIは「その商品の価格が、店舗全体の安さ・高さの印象にどれだけ影響するか」を見る考え方です。
販売数量があまり減らないからといって、卵や牛乳を大きく値上げしてよいわけではありません。その商品の販売数量は維持できても、「この店は日用品が高くなった」という印象を与え、店舗全体の利用頻度が低下する可能性があります。
反対に、顧客が価格をほとんど覚えていない商品まで競合店より安くする必要もありません。全品で最安値を目指せば、粗利益を失い、店舗運営や従業員の待遇にしわ寄せが生じます。
重要なのは「守るべき価格」と「利益を回収する価格」を分ける。これが値上げ局面における基本的な価格設計です。
特売商品の売上高だけを見てはいけない
値下げや特売についても、対象商品の販売数量だけで判断すると誤ります。
価格施策は、対象商品の売上高ではなく、その商品をきっかけに来店が増えたのか、関連商品が一緒に売れたのか、最終的に店舗全体の利益につながったのかを確認する必要があります。
クーポンも同様です。配布した顧客の購買率が高かっただけでは、効果があったとはいえません。もともと購入する予定だった顧客に値引きを提供しただけであれば、店舗にとって追加的な売り上げや利益を生んでいない可能性があるためです。
対象顧客の一部をランダムに非配布群として残し、配布群との差を比較します。つまり「クーポンを配った場合」と「配らなかった場合」で、どれだけ追加の利益が生まれたかを検証します。
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