店頭の「欠品」はなぜなくならない? 「予測発注」の限界と、先進企業が見いだした「次の解」:「3つの『やめる』」で小売りは変わる(2/3 ページ)
「いつもの商品が、いつでも買える」――この環境を用意することは、小売業にとって当たり前のようで容易ではない。欠品と過剰在庫を生む「発注」の仕組みを見直し、商品を切らさないための方法を探る。
「発注するのは小売り」の常識を変えた、ウォルマートとP&G
小売業が発注を手放す事例は真新しいものではなく、実は企業間では以前から存在していた。
1980年代に米Walmart(ウォルマート)と米P&Gが取り組んだ、ベンダー主導型在庫管理(VMI)と呼ばれる方式がこれに当たる。ウォルマートが販売実績(POS)データや在庫データをP&Gと共有し、メーカー側が補充を担った。
なぜメーカーが補充を担うのか。自社商品の販売実績や在庫状況に加え、生産や供給の状況まで把握できるメーカーが補充を判断することで、供給全体を最適化しやすくなるからだ。
小売業が自ら発注数量を決めるのではなく、メーカー側が販売・在庫データを基に補充を担う。発注の主体を小売業からメーカーへ移し、補充をメーカー側に委ねたのが、VMIだった。
パナソニックは「売れ残り」のリスクをどこに移したのか
「誰がリスクを担うか」という問題に対して、家電メーカーが答えを示した事例もある。パナソニックの「指定価格制度」だ。正式には条件付販売と呼ばれる。メーカーが小売店に販売価格を指定する代わりに、売れ残った商品の返品をメーカーが引き受ける方法だ。
2020年度に一部の家電から試験的に始まり、2023年度には、白物家電の販売金額ベースで38%を占めるまで、指定価格制度の対象を広げた。
もっとも、パナソニックの事例はVMIのようにメーカーが日々の補充を担う仕組みではなく、指定価格制度にはブランドを守るための別の目的もあるだろう。ただ、これらの事例に共通しているのは、店舗が在庫リスクを抱え、売れ行きを見ながら価格や発注を判断するという従来の役割を見直した点にある。
これにより、店舗に与えた影響も興味深い。店舗が売れ残りを処理するための値引きに頼る必要性も小さくなった。パナソニックは、この制度による営業利益の改善効果を、2022〜23年度の2年間で約100億円と発表している。在庫リスクを誰が担うかを変えることで、欠品や過剰在庫、値引きの在り方まで変わってくる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
客離れを起こす“残念な値上げ”の特徴 物価高時代でも“買わせる”「値付け」の方程式
止まらない値上げ。小売業も値上げの見直しを迫られるが、原価に応じた一律値上げでは客足を遠ざけてしまうかもしれない。値上げ時代に求められる新しい価格戦略とはーー。
「トヨタ式」が食品小売りを救う? セブン、マクドナルドが挑む「需要を先につかむ」店舗経営
製造業の生産管理法として知られる「トヨタ式ジャストインタイム」。この考え方が今、食品小売業でも重要性を増している。セブン‐イレブンやマクドナルドの取り組みをもとに「予測して作る」から「需要に合わせて作る」への転換を考える。
なぜ、ユニクロの売り場は「買いやすさ」と「補充しやすさ」を両立できるのか 強さを支える“思想”に迫る
少々の割高感が話題になることもあるが、いまだ圧倒的な人気を誇るユニクロ。小売りに詳しい筆者が、その売り場から「強さ」の正体を分析する。
