店頭の「欠品」はなぜなくならない? 「予測発注」の限界と、先進企業が見いだした「次の解」:「3つの『やめる』」で小売りは変わる(1/3 ページ)
「いつもの商品が、いつでも買える」――この環境を用意することは、小売業にとって当たり前のようで容易ではない。欠品と過剰在庫を生む「発注」の仕組みを見直し、商品を切らさないための方法を探る。
連載:「3つの『やめる』」で小売りは変わる◆
小売業の競争は「需要を予測する力」から「需要を早くつかむ力」へ変わりつつある。本連載では、トヨタ自動車で生産技術や工場経営に携わり、流通・食品の現場改革に取り組むBeyond Norms代表の福山弦氏が、従来の店舗運営の常識を問い直す「3つのやめる」を解説する。
いつも購入している牛乳がスーパーマーケットの棚から消えている――日常の買い物で、誰もが一度は経験したことがあるだろう。こうした経験は、小売業が長らく解決できずにいる課題の表れでもある。
前回の記事では、小売業の現場で「事前注文」が広がると商品が「必ずある」と「新鮮なまま」を両立させる難所が生まれることを説明した。今回は「必ずある」に注目する。
顧客が求める商品の在庫を切らさないこと――。当たり前のようでいて、実現できていない店舗も多い。そして、在庫が切れてしまう要因の一つは、日々当たり前のように実施している「発注」という行為そのものにある。
著者紹介:福山弦(ふくやま・げん)
Beyond Norms代表取締役
トヨタ自動車で生産技術、工場経営、新規事業、CVC(Woven Capital)に従事。製造業で培ったプル型補充とTPS/TOCの原理を、流通・食品の現場改革へ応用する。名古屋・STATION Aiを拠点に、これまで“当たり前”とされてきた常識を覆す各種事業を進める。
公式Webサイト:Beyond Norms
なぜ商品は「欠品」する? 発注に潜む落とし穴
発注とは、担当者が「これからどれだけ売れるか」を予測し、その数量を先回りして注文する行為だ。多く見込めば余り、少なく見込めば不足する。欠品と過剰は別々の失敗ではなく「予測」という一つの行為から生じる表裏一体の問題だ。
しかも厄介なことに、定番商品ほど切れたときの痛手は大きい。目当ての銘柄がなければ、客は別の商品で妥協するか、あるいは購入せずに他店へ向かう。一度「あの店はときどき商品を切らしている」と思われれば、来店の理由そのものが揺らぐ。定番商品は、その店を訪れる動機の中心にあるからだ。
この課題に、小売業はどう向き合えばいいのか。
対策の一つが、需要予測だけに頼って発注するのではなく、実際の販売状況に応じて補充する仕組みだ。商品が売れて在庫が減れば、その実績に応じて補充する。先に読んで積み上げるのではなく、売れたという事実に反応して埋める手法だ。前回の記事でも触れたトヨタ式ジャストインタイムにも、必要なものを必要なときに必要な量だけ動かすという、共通する考え方がある。
需要を先読みして店舗側が数量を決める「発注」から、販売実績に応じて在庫を補う「補充」へ。こうした発想の転換が、定番商品を切らさない仕組みの出発点になる。
「誰が補充するか」で変わる、小売りの在庫管理
ここで、その補充を誰が担うのかという問いが生じる。
各店舗が補充を担うとは限らない。売れた分を補充するのであれば、その商品の需要を最も把握できる主体が担うのが合理的だ。店舗か、卸か、それともメーカーか――この問いに対して、世界はいくつかの答えを示し始めている。
中国のあるスーパーマーケットの利用者から聞いた話がある。その人は毎回、同じヨーグルトを購入する。アプリ経由で購入するため、購買の履歴が蓄積される。そのヨーグルトを購入してから一定期間がたつと、次の購入を促す案内がアプリに届く。店舗に足を運んで購入することもあれば、配達を依頼することもある。いずれにせよ「いつもの商品」が手元から絶えることがない。
これは、その人にとっての定番商品を、購買履歴という需要の裏付けに基づいて再購入につなげている状態だ。従来のように「店舗が売れ行きを予測して発注する」のではなく、個人の購買実績を起点に次の購入が促されている。
日本では、全ての商品を個別配送することは物流コストの面から難しい。そこで、店舗を「商品を受け取る場所」として生かしながら、購買履歴や販売データを使って定番商品を切らさない仕組みをどう構築するかが問われる。
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