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「社内用語」がAI分析を邪魔する……ニトリが“力技”で解決 「赤羽店の寝具の売上高を出して」可能にできたワケ(2/2 ページ)

AI分析しようにも「社内用語」が壁になる――多くの企業が抱えるこの課題に、ニトリが挑んだ。地道な作業を積み重ねてつかんだのは、誰もが使いやすいデータ分析基盤だった。

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社内用語「DELVTO_CRP_KBN」はAIに読めない

 BIツールが備えていた探索機能は、誰でも使いやすいように「会話型分析」に置き換えた。社員が自然言語で見たいデータを伝えると、AIがSQLコードを生成してデータを抽出する仕組みだ。

 BIツールの置き換えを支えたのが「抽出はAI、分析は人」という考え方だ。小林氏は「欲しいデータの取得はAIに任せ、人はその結果を使って十分に時間をかけ、分析と仮説検証に注力すべきだ」と説明する。

 もっとも、会話型分析はAIの機能を有効にすればすぐ使えたわけではない。障壁はデータそのものにあった。例えば、既存システムから引き継いだカラム(列)名の「DELVTO_CRP_KBN」は「納品先会社区分」を指す。英語と日本語が混ざった社内の命名規則によるもので、AIには読み取れない。同種のテーブルが2600本積み上がり、時間がたつほど「何のために作ったのか」という文脈が欠落していく。

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AIが理解できない既存データの例(出所:ニトリの講演資料)

 対策方法は単純だった。テーブルのプロパティにある「説明」の欄に、欠落した文脈をひたすら記述したのである。小林氏は「プロパティに記述する方法であればAIが確実に拾ってくれる。最初は『説明』に何でも書いてしまえばよい」と勧める。データサイエンティスト、アプリ開発者、業務ユーザーなど異なる立場の視点で、Wikipediaの記事を整備するようなイメージで書き込んだ。

 同じ要領で個々のカラムにも説明を付け、テーブル間の関係性や質問の前提となる補足情報、検索を安定させる問い合わせの見本も用意した。社内用語にも対応しなければならない。例えば、ニトリ独自の「伝票種別」であれば「レジでの決済」「注文・取り寄せ」「キャンセル」といった各コードの意味まで記述し、その用語をテーブルやカラムにまとめて関連付けた。

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社内用語「伝票種別」の整備例(出所:ニトリの講演資料)

「赤羽店の寝具の売上高を出して」でデータが出てくる

 説明を整備した成果は、質問の投げ方に表れている。例えば「赤羽店の先週の寝具分類の売上高と売上高前年比を、中分類単位で出して」といった具合だ。ごく普通の依頼に見えるが、店舗名や商品分類体系など、社内でしか通じない言葉が詰まっている。これをAIに投げても適切な答えが返ってくるのは、説明を整備したからだ。

 さまざまなデータ分析の切り口がある中で、特に難しいのが「マットレスプロテクターと敷布団の同日併売実績を抽出して」というような質問だ。この分析をするために、人がSQLコードを書こうとすると苦労する。だが、AIならば、BigQueryに最適化したSQLコードを巧みに組み立ててくれる。質問次第では、その場で需要予測のグラフを描く、顧客の声を意味で分類するといった高度な分析も実行できる。

 派生的な効果もある。整備した説明は、そのデータが何を示すのかを解説しているため、着任直後のシステム管理者の学習や、開発者による既存環境の調査にも役立てられる。

IT技術がなくてもいい データ分析基盤の整備術

 一連の取り組みのポイントは「データの説明を整備する」という一点に絞られる。小林氏は、そこから3つの効果を挙げる。

  1. データ分析ユーザー向け:抽出の手間が減り、分析と考察に時間をかけられる
  2. システム運用管理者向け:データの解説で全容を把握でき、育成を早められる
  3. システム開発者向け:AI駆動開発やコードアシストによる新システムの生成が進む

 3つ目には注意点もある。10年以上使い続けたプログラムが大量にある環境では、それらを壊さない改修が求められる。AIによるソースコードの自動生成にも、データ構造の理解が欠かせない。そこでニトリHDは「システムがレガシー化しない環境」を目指して、新たな取り組みを進めるという。

 講演の締めくくりで小林氏は「やったことは、データの説明を作文したことだけ。IT技術を持つ限られた人にしかできないことではない」と強調した。全社のデータを網羅する必要はなく、重要度の高い上位5つ程度でも効果は確認できるとして、データ分析に取り組もうとする企業にエールを送った。

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