飲食店の倒産が相次ぐのになぜ強い? 吉祥寺の4.5坪店が「6つの収益源」で稼ぎ続けるワケ(3/3 ページ)
飲食店や書店の閉店が相次ぐ中、東京・吉祥寺のわずか4.5坪の店舗で開業から黒字基調を続ける喫茶店がある。「探検・冒険」をテーマに、書籍・カフェ・雑貨・自社出版・イベントという6つの多層収益構造を構築。さらに東京都の創業支援制度や伴走コンサルタントを徹底活用し、資金やノウハウの壁を打ち破った。新規事業のPoCやリスク低減にも応用できる収益設計の裏側に迫る。
公的支援を「事業資源」として使い倒す リスクを最小化する視点
チャレンジショップの最長利用期間は、1年間だ。卒業後に自らの店舗を持った出店者も多く、制度の設計自体が「実店舗開業への助走」として機能している。コンサルタントが物件の内見にも同行し、賃料の妥当性まで一緒に判断してくれるという。二荒氏はすでに「西荻窪、国分寺、国立あたりで、小さいところで本と喫茶はやっていきたい」と、次の物件探しを始めている。
二荒氏の事例から、出店期間中に取り組んでおく活用法がいくつかある。まずは「本業以外の収益軸を早期に立ち上げること」だ。チャレンジショップ卒業後の店舗開業の時点で、実績と流通チャネルの素地が整っている状態を作ることが、次の物件交渉や資金調達でも有利に働く。
「次に開業する店舗に持ち込める道具を選ぶこと」も重要だ。二荒氏は「次の店で買った本棚が店の中に入らなかったら困る。だから初めから、崩せるような本棚にするべきだと思っていました」と話す。出店中の判断基準を「チャレンジショップ卒業後の店舗でも(その道具を)使えるか」に置くことで、次の開業の資産に変えたのだ。
顧客との関係を、在籍中から育てておく準備も欠かせない。「お客さまに『今こういう本を探しています』とお話したところ、次に来店された時に探していた本や関連書籍をリュックいっぱいに持って来て、見せてくださったことがあります」。立地を生かして集客するだけでなく、コアなファンを形成しておくことが、独立後の店舗運営を軌道に乗せる力になる。
事業計画の精度を上げ、数字で経営を管理し、収益源を多層的に分散させる――。二荒氏の実践が証明したのは、情熱だけでは越えられない「黒字化の壁」も、公的制度を戦略的に使い倒すことで確実なビジネスに育てられるという事実だ。
新規事業の立ち上げにおいても、現在活用できる事業資源を経営戦略に組み込む視点こそが、リスクを抑えながら一歩を踏み出す武器となるはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「軍隊のようなルールは不要」 マックと対極の文化で「44カ月連続成長」したバーガーキングの組織論
バーガーキングの急成長の裏にあるのは、徹底した標準化を図る競合とは対照的な、個を尊重する精神だ。チェーンストア理論に逆行する「脱軍隊的」な組織運営が、なぜ外食産業でこれほどの成功を収めるのか。野村一裕社長に、服装の自由や「60%の走法」、家族まで感動させる報奨制度など、独自の躍進術を聞いた。
マック一強の牙城を崩せるか バーガーキングが「3つの強み」で描く勝ち筋とは?
マクドナルドが圧倒的シェアを握っているハンバーガー市場。後発のバーガーキングはいかにして独自のポジションを築いてきたのか。運営会社ビーケージャパンホールディングスの野村一裕社長に聞いた。
バーガーキング「800億円買収」の衝撃 なぜゴールドマン・サックスは「日販3倍」の成長に賭けたのか
米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)によるバーガーキング日本事業の買収は、外食業界で大きな話題となった。世界有数の金融機関が巨額の資金を投じてでも手に入れたかった企業に今、何が起きているのか。バーガーキング運営会社の社長に、この買収劇の背景と今後の展望を聞いた。
「ブランドを壊すのは担当者のエゴ」 バーガーキング社長が明かす急成長のワケ
バーガーキングの外食業界における存在感は年々増しており、マクドナルドやモスバーガーに続く主要チェーンとしての地位を確立しつつある。なぜここまで成長できたのか。その舞台裏を、運営会社社長に聞いた。
「貧乏人の食べ物だ」 “スープの巨人”キャンベル社が防げなかった「顧客蔑視」の末路
「スープの代名詞」、ザ・キャンベルズ・カンパニーの副社長(当時)であるマーティン・バリー氏が口にした「貧乏人のためのクソみたいな食べ物」。通報者はわずか20日後に会社を解雇された。同社の対応は、有事における企業対応のケーススタディとして極めて示唆に富んでいる。時系列で追う。
ソニー平井元CEOが語る「リーダーの心得5カ条」 若くして昇進した人は要注意
ソニーグループを再生させた平井一夫元社長兼CEOが自ら実践し、体験を通じて会得したビジネスリーダーに必要な要件とは?
“管理しない店長”で最高年収2000万円!? 丸亀製麺「心的資本経営」の正体
丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスには、最高年収2000万円を目指せる特別な「店長」の肩書がある。年収2000万円を目指せる店長制度を用意した狙いは? 南雲克明・CMO兼丸亀製麺常務取締役マーケティング本部長に聞いた。
「KPIは睡眠時間」──オードリー・タンに聞く、日本企業の生産性が上がらない根本原因
生産性の低さが指摘されている日本。人口減少が追い打ちをかける中で、現状を打開するためには、どうしたらいいのか。企業はAIをどのように使いこなしていくべきなのか。オードリー・タンさんに聞いた。


