「ブランドを壊すのは担当者のエゴ」 バーガーキング社長が明かす急成長のワケ
バーガーキングの外食業界における存在感は年々増しており、マクドナルドやモスバーガーに続く主要チェーンとしての地位を確立しつつある。なぜここまで成長できたのか。その舞台裏を、運営会社社長に聞いた。
バーガーキングの快進撃が止まらない。2019年に77店舗にまで落ち込んだ国内事業は、2025年末時点で337店舗へと拡大。既存店売上高は2022年7月から44カ月連続で前年同月比プラスを記録し、2025年の売上高は約700億に達した。さらに2028年末には600店舗体制を目指すなど、成長の勢いは加速する一方だ。
バーガーキングの外食業界における存在感は年々増しており、マクドナルドやモスバーガーに続く主要チェーンとしての地位を確立しつつある。日本でバーガーキングを運営するビーケージャパンホールディングス(東京都千代田区)は、米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)に日本事業の売却を約800億円で決定した(【バーガーキング「800億円買収」の衝撃 なぜゴールドマン・サックスは「日販3倍」の成長に賭けたのか】参照)。
2019年にビーケージャパンホールディングスにマーケティングディレクターとして入社し、この成長を牽引(けんいん)してきたのが野村一裕社長だ。
なぜバーガーキングはここまで成長できたのか。その舞台裏を、野村社長に聞いた。
野村一裕 ビーケージャパンホールディングス社長。1978年生まれ。上智大学卒業、MBA、一橋大学大学院国際企業戦略専攻。2002年キリンビール入社。料飲店・量販店の営業担当や商品マーケティング担当を歴任。2019年ビーケージャパンホールディングスに入社。同年新体制となったバーガーキングのマーケティングディレクターとしてマーケティング戦略、新商品開発、ブランドコミュニケーションを指揮。2022年にCOO就任。マーケティング部門に加え、店舗開発やフランチャイズビジネス部門を統括。2023年1月より代表取締役社長に就任(撮影:河嶌太郎)
「直火焼き」一点集中 バラバラだったブランド定義を再構築
――バーガーキングは1993年から日本で展開していますが、なぜここ数年の短い期間でこれほど急激に成長できたのでしょうか。店舗数が増えてアクセスが良くなったという物理的な要因以外に、何か決定的な理由はありますか。
もちろん、店舗数が増えて利便性が上がったことは前提にあります。しかし、一番大きかったのはブランドの定義を明確にしたことです。
2019年にマーケティング責任者として入社後、多くのお客さまにヒアリングをしました。「なぜバーガーキングが好きなのか」という問いに対し、お客さまの答えはバラバラでした。「アメリカが好きだから」「出張の思い出があるから」「大きいから」「パチンコで勝った時の験担ぎ」など、理由は人それぞれで統一されていませんでした。
そこで私は、それらの声を一つに集約し、「直火焼き」というキーワードにフォーカスすることにしました。「あなたがマクドナルドに行かずにバーガーキングに来る理由は、直火焼きだからですよね」と、強い形で利用者へのメッセージを統一したのです。トレイのマットに「直火はうまい」と書き続け、2019年からその軸は一切ぶらしていません。
ブランドを崩すのは担当者の「エゴ」 喝破する理由
――それだけ強力なメッセージを発信し続けるために、野村社長は「ブランド」というものをどのように定義し、コントロールしているのでしょうか。
ブランドというのは企業のものではなく、利用者の頭の中にあるイメージそのものです。マーケティングの仕事は、その印象を操作し、管理することです。一番怖いのは、新しく入ってきたマーケティング担当者が、自分自身の爪痕を残そうとして「黄色いリボンをつけたらかわいいよね」といった余計な変更を加えることです。マーケティング部はブランドの門番だと考えています。
利用者の中に「黄色いリボン」のイメージなんてないのに、勝手なエゴでデザインやトーンを変えてしまうと、利用者は「なんか昔と違うな」「味が変わったかな?」と違和感を持ち、離れていってしまいます。ブランドが崩れる原因の多くは、この「門番」の役割を怠ることにあるのです。
ですから私は、プレスリリースの一言一句までチェックします。「おいしい」と書くのか、「うまい」と書くのか。なぜ今回は「うまい」なのか。そうした細部まで徹底して統一してきたからこそ、今では利用者の方から「やっぱり直火焼きだよね」と言っていただけるようになりました。それがブランドのRTB(Reason to Believe、マーケティング用語で「信じるに足る理由」)としてお客さまに定着したのだと思います。
予算がないから「X」一点突破 数より熱量で勝負する
――最近は18歳以上の女性や、いわゆるZ世代の客層が増えているそうですね。どうアプローチしたのでしょうか。
前提として予算がないため、デジタルに特化したプロモーションやマーケティングをせざるを得ませんでした。もし潤沢な資金があれば、テレビCMだけでなくTikTokやインスタグラムなど全方位で展開していたでしょう。
しかしわれわれは「X」(旧Twitter)しか動かしていません。当社のXのアカウントのフォロワー数は約36万人と、数百万人のフォロワーを抱える競合他社に比べれば少ないです。しかし、フォロワーの「熱量」が全く違います。
――どのように差別化しているのでしょうか。
他社の投稿を見ると、フォロワーが数百万人いても「いいね」の数が数百程度ということがよくあります。これは企業アカウントへの「フォロー&リポストキャンペーン」などの影響もあります。一方、私たちはこうしたキャンペーンは一度も打っていません。
われわれは36万のフォロワー数でも、同じような投稿で数千から万単位の反応をいただけます。これは、企業アカウントでありながら「中の人の顔」が見えるような、人間味のある運用を心がけているからです。時々、担当者に内緒で私自身が投稿することもあるんですよ。ポストボタンを押す時はドキドキしますが、それが万バズしたりします。
毎日SNSを見ているからこそ、「今ならこれがいける」というタイミングが分かりますし、そうしたキャラクターや輪郭をデジタル上で明確にできたからこそ、若い世代に身近に感じてもらえているのだと思います。
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