プルデンシャル生命でまた不祥事……営業自粛の裏で続いた詐取、なぜ「不正」は根絶できないのか(1/4 ページ)
自粛期間中の金銭詐取や情報紛失の連鎖に揺れるプルデンシャル生命。完全歩合制や「スター聖域化」がもたらした組織文化の病理とは。
「キレイごとナシ」のマネジメント論
常に目標を達成させる「常勝集団」をつくるために、キラキラしたビジネスtipsは必要ない。組織マネジメントを専門とする横山信弘氏が、本質的なマネジメント論を「キレイごとナシ」で解説する。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
「大変重く受け止めており、改めて深くおわび申し上げる」
8月24日、プルデンシャル生命保険がそう発表した。営業自粛期間が続く中、被害の実態がさらに広がっていたからだ。
今回は、保険業界でなぜ不正が繰り返されるのか、その構造的な背景を解説したい。同業界のビジネスパーソンのみならず、組織づくりに悩む経営者や管理職にもぜひ最後まで読んでもらいたい。
自粛期間中も被害は広がり続けていた
まず、これまでの経緯を振り返っておこう。
事態が大きく動いたのは2026年1月である。プルデンシャル生命の社員・元社員107人が、顧客503人から、計約31億円を不適切に受領していたことが発覚した。不正は、なんと1991年から2025年まで、実に30年以上にわたって続いていたという。
1月23日には記者会見が開かれた。当時の間原寛社長は「長年の重大な不適切行為が発覚し、心より深くおわび申し上げる」と謝罪し、2月1日付での引責辞任を表明した。後任には、グループ会社の社長を務めていた得丸博充氏が就任。会社側は、独立した「お客さま補償委員会」を設置して顧客被害の全額補償を進めること、報酬体系そのものを見直す方針を示した。
2月9日からは、新規契約の販売を90日間自粛。しかし、4月22日の記者会見では、この自粛期間をさらに180日間延長し、11月5日までとすることを発表した。同じ4月時点の報告では、対象となった事案のうち、審査が順調に進んだ一部について、約17億円分の補償手続きが進展していることが公表された。
ここまでは、経営陣の刷新と徹底的な自粛による「膿出し」のプロセスとして評価される側面もあった。しかし8月24日、それをあざ笑うかのように新たな不祥事が発覚した。
多摩支社に所属していた40代の男性営業社員が、複数の顧客に架空の高金利預金を持ちかけ、不適切に金銭を受領していた疑いがあることが発表されたのだ。問題は、この受領が自粛期間中である2月中旬以降にも行われていた可能性がある、という点である。
会社が新規契約の販売を自粛し、再発防止とガバナンス再構築に取り組んでいるはずの最中に、現場では新たな被害が生まれていたことになる。当該社員はすでに死亡しており、事実解明には制約があるものの、関係者によれば被害額は1億円を超える見通しだという。
さらに同じ多摩支社では、2026年夏、3月に退職した別の元営業社員が顧客約600人分の情報を無断で持ち出し、高速道路のサービスエリアで紛失するという重大な情報漏えい事案も発覚している。営業自粛中という「監視の目が最も厳しく注がれているはずの期間」に、金銭詐取と情報紛失というダブルのモラルハザードが起きていた事実は深刻だ。
この一連の混乱が経営に与えた打撃も凄まじい。2026年3月期連結決算において、顧客への補償費用として計上された特別損失は、グループ全体で約55億円に達し、当初想定された31億円を大幅に上回った。長期にわたる新規営業自粛の影響により、プルデンシャル生命単体の新契約高は22.9%も急減している。これほどの経営危機に直面していながら、現場のモラルハザードが抑止できなかった。ここに、この問題の根深さがある。
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