ネジ1本、文具1個の無駄を削れ デンソーら製造大手3社が「間接材」のブラックボックスに挑んだ理由
製造業において「間接材」の調達プロセス改革に乗り出す大手企業が相次いでいる。“法人版Amazon”とも言える仕入れ・購買管理システム「Amazonビジネス」を導入する3社に、成果や、システムを現場に浸透させるための工夫について聞いた。
製造業において利益率向上や原価低減を図る際、これまでは原材料や部品といった「直接材」のコスト削減が主な手段だった。
だが、ネジ1本からオフィス備品まで、現場ごとに個別調達され「ブラックボックス化」していたのが、副資材・消耗品・設備備品などの間接材だ。
こうした中、コニカミノルタ、デンソー、JX金属は、製造業の利益率向上を阻む間接材の調達にメスを入れた。3社は“法人版Amazon”ともいえる仕入れ・購買管理システム「Amazonビジネス」を導入。間接材の調達プロセス改革に取り組んでいる。
コニカミノルタの張楠氏(調達センター間接財調達部長)、デンソーの藤澤晋平氏(資材設備調達部長)、JX金属の関山彩氏(管理担当課長)がAmazon主催のイベントに登壇。長年手つかずだった「間接材調達」を改革し、現場の購買意識まで変革した先進3社のリアルな挑戦に迫る。
本記事はAmazon主催の「Business Exchange 2026」(7月28日開催)のパネルディスカッション「製造業の購買改革最前線 〜先進企業が実践した改革のリアル〜」を基に構成したもの。
3社が「間接材」に着目した理由
──なぜ、直接材ではなく「間接材」の購買改革に着目したのでしょうか?
張楠氏(コニカミノルタ): 当社は2019年頃に新しい購買システムを全社導入し、購買改革を進めてきました。現・旧中計においてROE(自己資本利益率)目標の達成に向け資本効率を高めることが重要テーマとなっており、直接材については継続的な最適化が進んでいました。一方、間接材は品目やサプライヤーが多く、各部門が個別調達していたため、改善の余地があました。
間接材も直接材と同様に見える化し、全社規模で適正価格での調達や関連する業務の効率化を図ることが収益性の向上につながると考えました。
藤澤氏(デンソー): 間接材は直接材と比べて購入金額自体は大きくないものの、品目数や毎月の値決め件数が非常に多く、どう効率化できるかがポイントになっていました。
また、グローバルで間接材調達の標準化ができておらず、本社から海外拠点の実態が見えにくいという課題もあり、購買改革に取り組むことになりました。
関山氏(JX金属): 当社は今、全社的な構造改革プロジェクトを進めています。そうした中で、全社員が日常的に触れる間接材の購買を変革することは、全社的な構造改革プロジェクトを身近に意識するようになる「フラッグシップ」のような役割を期待し、取り組み始めました。
法人版Amazonを活用 人里離れた拠点でも成果が
──Amazonビジネスを導入後、どのような成果がありましたか。
関山氏: 人里離れた拠点を新しく開設した際に、非常に助かったという声が聞かれました。また、現場が直接発注できるようになったことで、従来のように調達部門を介してコミュニケーションを取る必要がほぼなくなり、発注リードタイムが大きく改善しました。
藤澤氏: システム導入と業務の標準化によって、購買活動全体で10%の効率化が図れました。誰でもできる作業はバックオフィスやDXに集約し、人員換算で10%の余剰を生み出し、それをより戦略性の高い業務へとシフトさせています。
また、データを蓄積して見える化したことで、地域ごとの集中購買や品目ごとの発注戦略の議論ができる組織へと変化しました。
張氏: 数字としてのコスト削減効果に加え、全社的なコスト意識が大きく変わりました。設備投資の際に「調達に見てもらったのか」という会話が自然に出るようになり、調達が関与した案件は妥当性が担保されるため、承認もスムーズに進むようになりました。現場からサプライヤーへの交渉や相談も増えています。
社内への浸透に何年も 3社の「現場を変える」工夫
──システムを現場へ浸透させるためにどんな工夫をしましたか。
藤澤氏: 特に海外拠点のバイヤーのマインドセット変革に力を入れました。単にシステムを入れて楽になるという発想ではなく、グローバルの標準的な仕事の進め方を受け入れてもらうため、対話や説明会で丁寧に説明しました。
また、一斉導入ではなくパイロット拠点を設けて成功事例を作り、そのメンバーが他拠点の導入をサポートするステップ・バイ・ステップの進め方をとりました。
張氏: 社内への浸透に何年もかけました。購買ポータルでの情報発信や拠点ごとに操作説明会を開き「なぜこの改革を進めているのか」「現場にとってどんなメリットがあるのか」を丁寧に説明しました。
また、経理部門にも協力を依頼し、立て替え精算があった場合はシステムを通すよう案内を徹底してもらいました。
関山氏: 個人でAmazonを利用している社員が多いため、展開自体はしやすかったです。
人ならではの知恵や熱量をどこにかけるか
──今後はどのような取り組みを進めていきますか。
張氏: 今後は「データ分析」に注力したいです。システムに蓄積された膨大なデータから、削減のネタ探しや価格トレンド、サプライヤー集約の候補探しなどを生成AIなども活用して効率化していきたいです。
藤澤氏: 当社もAIをもっと活用し、最安値が複数ECサイトから表示されてボタン一つで発注が完結するような世界を実現したいです。また、データの利活用によるグローバルでの集中購買に挑戦したいです。
DXやAIで自動化できる領域が広がる一方、経営が調達に期待するのは、複雑で戦略的な仕事での成果です。人ならではの知恵や熱量をどこにかけるか定義することが重要だと感じています。
関山氏: EC未掲載品の代替品切り替えや、為替変動などのBCP(事業継続計画)観点からの購買手段の多様化・最適化をさらに追求していきたいです。
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