預金3000万円でプラチナカード無料 三菱UFJ「50兆円の富裕層囲い込み」に透ける焦り(2/5 ページ)
三菱UFJ銀行が預かり資産3000万円以上の顧客を対象に、年会費無料のプラチナカードを提供する新会員組織を発表した。対象は顧客の2%ながら、個人預金の半分にあたる50兆円を占める層だ。「金利のある世界」の復活で預金の収益性が高まる中、一見攻めに見える大盤振る舞いの真の狙いは、親の世代交代に伴いネット銀行へ流れ出す「50兆円の相続流出」の防衛だ。メガバンク首位が仕掛けるLTV重視の防衛戦略の裏側に迫る。
預金3000万円で「プラチナ無料」 最大1.6%還元のワケ
MUFGは8月26日、富裕層向け会員組織「エムット Excellent Club」と、デジタル相続プラットフォーム「エムットそうぞく」を発表した。会員組織は2027年3月、相続プラットフォームは2026年度下期に始める。
会員組織の対象は、三菱UFJ銀行に「預かり金融資産3000万円以上」または「資産運用残高1000万円以上」を持つ個人だ。条件を満たした顧客を銀行側から順次招待するオプトアウト方式(断らない限り会員になる方式)を基本とし、入会金・年会費は無料。該当者は約75万人で、個人顧客全体の2%にすぎない。ただし、この2%が個人の預かり残高の約半分、50兆円を持っている。
エムット Excellent Clubの本人会員は約75万人で、顧客全体の2%にすぎない。だが、この75万人が保有する預かり残高は50兆円と、同行の個人預かり残高約100兆円の半分を占める(MUFG発表会資料より)
目玉は会員限定のクレジットカードだ。三菱UFJ銀行と三菱UFJニコスが共同開発した「エムット Excellent Club カード プラチナ」は、アメリカン・エキスプレスブランドのプラチナカードでありながら、本人・家族とも入会金・年会費が永年無料。還元率はカードの利用額ではなく三菱UFJ銀行への預かり残高で決まり、入会ラインの3000万円で1.0%、最大1.6%まで上がる。対象は預金種別を問わず、投資信託などの運用残高も含む。この仕組みで特許を出願している。
カード以外には、銀行・信託・証券の専門家と、外部の税理士法人にオンラインで相談できる「エムット Excellent Brains」や、円定期や外貨定期の金利優遇、住宅ローンなどの金利優遇、窓口の優先予約枠が並ぶ。入会資格は現在の「三菱UFJ銀行 エクセレント倶楽部」と同一で、変えたのは特典の中身と、申込制から招待への入り口だ。
MUFG執行役専務の山本忠司氏(リテール・デジタル事業本部長兼グループCDTO)は「金利のある世界となり、各行で預金金利の引き上げ競争が激化している」と外部環境を説明した上で、新しい局面を「預金金利プラスアルファの付加価値の競争」と定義した。3メガバンクの普通預金金利が横並びの中、金利ではなく特典で預金を囲い込むという宣言である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
年会費16万5000円を「据え置いた」AMEX プラチナが売る"体験"の裏に「年500万円」の顧客選別
アメリカン・エキスプレスは、「プラチナ・カード」の年会費16万5000円を据え置き、特典を刷新した。競合の「安いプラチナ」が乱立する中、本家は価格競争を拒み、「体験の総量」で勝負を仕掛ける。しかし華やかな拡充の裏には、旅行保険の自動付帯廃止や、最大特典の獲得に「年500万円の決済」を義務付ける防衛線が潜む。高額利用層だけを絞り込む「顧客選別」とは――。
富裕層の「使う喜び」をどう引き出すか ダイナースとニューオータニ「18万円超カード」の真意
内閣府のデータが示す「85歳でも資産が減らない」というデフレマインドに縛られた日本型富裕層。インフレ時代を迎え「資産を体験に変える」ためのコンパスとして、ダイナースクラブとホテルニューオータニが年会費18万円超のプレミアムカードを解禁した。「全員平等」を守ってきた老舗ホテルの方針転換の裏には、半世紀続く厳格な審査体制と「平均値しか出せないAI」には不可能な人間のおもてなし戦略があった。
ANA「会員制度見直し」で問われる企業姿勢 JALとの比較で見えた“選別”の代償
ANAは4月23日、上級会員制度「スーパーフライヤーズカード」の見直しを発表した。今回の改定がANAのビジネスに今後、どれだけの影響を与えるのか。競合JALの戦略と比較し、考察する。
ANAは座席指定不可、JALは変動制マイルへ 苦境の国内線“値上げとサービス制限”の真相
ANAは大胆な運賃体系の変更に踏み切り、JALは顧客への寄り添いを重視する戦略を取っている。目前に迫る「史上空前の燃料高騰」が浮き彫りにした国内線ビジネスの限界とは? “運賃値上げ”を見据えた両社の生存戦略を分析する。
会見なしのANA、チーフCA解雇のJAL 航空2社の対応にみる危機管理広報の分岐点
身内に極めて厳しい処分を下すことによって、ブランドの規律を世間に示したJAL。一方、実務混乱のさなかにあっても一般向けの説明責任を果たさないANA。企業の明暗を分ける「危機管理広報」とガバナンスの分岐点を、航空2社の対応から考える。
マイル庶民化で激化する「地上戦」 決済額300万円のANA、生涯伴走のJALに見る勝算
日系大手のANAとJALの両社は、自社のマイルを基盤とした「金融・プラットフォーム企業」への変革に活路を見いだしている。「移動の提供」だけでは維持できないインフラコストを、いかにしてマイルプログラムをベースとした決済サービスによって回収するのか。両社の戦略の違いから、マイル経済圏の展望を読み解く。
「ANA系Peach」と「JAL系ジェットスター」 二大LCCが選んだ「生存戦略」の分かれ道
大手航空会社ですら収支悪化に苦しむ高コスト時代が到来する中で「安さ」を武器に成長してきたLCC(格安航空会社)は、ビジネスモデルの限界に直面している。「ANA系Peach」と「JAL系ジェットスター」という二大LCCが選んだ「生存戦略」の分かれ道とは?
「希望退職を募集することになったら、私はJALを辞めます」 日本航空・菊山英樹専務
コロナ禍による国際、国内の旅客数減少が長期化して日本航空(JAL)は苦しい経営が続いている。経営破綻後に当時の稲盛和夫会長(現在は名誉顧問)から経営のやり方を巡って叱責された経験がある菊山英樹専務にインタビューした。
日本人「旅行離れ」の根本原因 インバウンド高騰で泊まれない実態と「AIの限界」
かつての「安価な団体ツアー」が崩壊した今、旅行業界は誰をターゲットにし、どんな付加価値を提供すべきなのか。各社のデータと予測トレンドから、2026年の旅行ビジネスにおける勝ち筋を分析する。
会員数「1億人超え」 欧州最大ホテルチェーンが日本で仕掛ける“脱中国人依存”の戦略
欧州最大のホテルグループである仏アコーが、日本をアジアの最重要市場と位置付け、積極的にビジネスを展開している。2028年には最高級ブランド「ラッフルズ東京」が上陸するなど、攻めの姿勢を崩さない。日本事業を統括するアコージャパンのディーン・ダニエルズ社長に、日本市場戦略の展望を聞いた。


