小田急駅員の胸元に「録画中」のカメラ 全70駅で導入、カスハラ対策の効果は?(3/3 ページ)
小田急電鉄が全70駅の駅係員にウェアラブルカメラを導入した。導入から4カ月以上が経過した現在、どのように使われ、どんな効果が出ているのか。同社に狙いや現状を聞いた。
カスハラへの導入効果はあったのか
ではカスハラやけんかなどが起き、駅員が駆け付ける「異常時」にはどのように運用するのか。小田急電鉄ではウェアラブルカメラを着用する際、警備会社のALSOKへ即座に通報できる「ALSOK非常ペンダント」を携行する。以前からALSOKの機器を導入していたが、ウェアラブルカメラの使用時にも同ペンダントも携行するルールとした。
これまで発生した駅員に対するカスハラには「乗客が乗車区間に応じた運賃の支払いを拒否し、係員に暴言を吐く」事例や、「乗客が忘れ物を申告し、捜索したが見つからなかったことで係員に暴言を吐く」事例があったという。ウェアラブルカメラの導入により、こうしたカスハラは無くなったのだろうか。
担当者は「効果を測るには期間が短く、導入による直接的な相関関係は不明」と説明しつつ、「2025年4月1日〜6月30日までの間、暴力行為を伴うカスハラは6件、その他も含めたカスハラは10件発生しました。一方で、P3000を導入した2026年は4月16日〜7月15日の3カ月間で、前者が0件、後者は5件でした」と回答した。
2026年に発生したカスハラ5件は、いずれも駅員がウェアラブルカメラを装着していなかった場面だ。担当者が言うように、ウェアラブルカメラ自体の効果を調べるには期間と件数が少ないが、「録画中」の表示はインパクトがあり、抑止力として働いた可能性がある。
近年、コールセンターに架電すると「品質向上のため録音させていただきます」という音声を聞く機会が増えた。こうした施策はカスハラ対策の他、やり取りの記録を残す目的もある。
小田急電鉄ではウェアラブルカメラの装着により、駅係員の心理的負担の軽減や安心感向上など、メンタル面の効果もあったという。
日本民営鉄道協会によると、鉄道係員に対する暴力行為の件数は、2019年度の581件からコロナ禍の影響で2020年度には377件に減少した。だがその後は再び増え、2025年度は590件だった。700件を超えた2016年度より少ないものの、コロナ前の2019年度を上回る件数だ。
他業界と同様に、鉄道業界も人手不足の影響を受けている。状況次第ではウェアラブルカメラの導入が他社にも波及するかもしれない。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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