買い物時に「親友よりもAIを信じる」7割超──「エージェンティックコマース」時代に仕込みたい「3つの戦略」(1/2 ページ)
AIの進化により、商品の「選ばれ方」が変わり始めている。AIが商品を探し、比較し、購入まで担う「エージェンティックコマース」の時代に、企業はどう対応すべきなのか。
「親友のアドバイスよりも、AIのおすすめを信じて買い物をする」――そんな購買行動が、現実味を帯び始めている。
アクセンチュアが世界16カ国で2万5000人以上の生活者(日本は1005人)を対象に実施した調査では、買い物において「代行してもらうなら、親友よりもパーソナライズされたAIエージェントを信頼する」と答えた人は、全体の74%(日本では75%)に達した。
さらに、常に決まったブランドの中から商品を選んでいるようなロイヤルカスタマーの37%(日本では34%)が「愛着のあるブランドでも、AIの提案による乗り換えを容認する」と回答しており、購買意思決定におけるAIの影響力が高まりつつあることがうかがえる。企業はAIに「選ばれる」ための対策をしなければ、これまで自社ブランドに愛着を持っていたファンを失い、市場シェアを落とすリスクすらあるのだ。
AIのトレンドは今、プロンプトに応じて回答を生成することから、自律的にタスクをこなすAIエージェントへと移行している。この進化はコマース領域にも影響を及ぼしている。自律型エージェントが商品の選択肢を提案するだけでなく、購入やアフターフォローまでを担う「エージェンティックコマース」への移行が進もうとしている。
アクセンチュアで企業の成長を支援する専門組織「アクセンチュア ソング」に所属する石井達郎氏は「購買行動を人とAIが一緒に進めるのが当たり前になるのが、エージェンティックコマースの世界観」と話す。
本稿では、同社が開催したエージェンティックコマースに関する勉強会の内容を基に、企業の生存戦略を考察する。
「エージェンティックコマース」時代に向け、企業は何ができる?
エージェンティックコマースが到来すると、生活者の購買プロセスは大きく変化する。生活者が自ら情報を検索し、商品を比較して購入を決定していたプロセスに、AIが介在するのだ。
ここで企業が認識すべきなのは、企業が向き合う「客」の姿が変わることだ。これからの時代、企業が向き合うべきは人間だけではない。感情や文脈で商品を選ぶ人間と、その生活者に代わって情報を収集・比較するAIエージェントの双方を意識する必要がある。人間とAIエージェントが一つになった「新しい生活者」に対し、いかに適切な情報を提供し、選ばれるかという戦略が問われている。
AIに商品を推奨させる「AIO」 最大12%のシェア損失の推計も
この新たな購買行動に対応するために、企業に求められる変革として、石井氏は3つのポイントを挙げる。
第1のポイントが「ChatGPT」「Gemini」など、生活者が日常的に利用する汎用(はんよう)AIが新たな顧客接点になることへの対応だ。AIが自社製品を見つけ、推奨できる状態をつくるための「AIO」(Artificial Intelligence Optimization:AI最適化)対応が必要となる。あるグローバル消費財メーカーでは、AIOに対応しない場合、最大12%のシェアを失う可能性があるとの試算も出ているという。
では、どうすればAIに推奨されるのか。従来のように「価格」「容量」といった商品スペックや、商品の基本的な訴求ポイントを発信するだけでは不十分だ。
具体例を挙げると「サーフィンの後に飲みたい低カロリーなビール」といった生活者の要望にAIが適切に回答できるよう「どんな場面(想定シーン)で、誰が(想定ターゲット)、どのように使う商品なのか」といった情報を拡充する。こうした商品情報を、AIが参照しやすいデータとして継続的に提供する必要がある。
旅行業界ではホテルチェーンを展開する米Radisson Hotel Groupが、自社のホテルの空室や料金情報などを、AIが参照しやすい形に構造化し、ChatGPT上で直接比較・検索できるミニアプリを展開するなど対応を進めている。
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