「全部手作業は無理」 新リース会計対応に追われたアルペン、AIで一次判定「3300→80時間」にできたワケ(1/3 ページ)
新リース会計基準への対応で、多くの企業が頭を悩ませている。多店舗展開するアルペンでは、過去の契約書1万件超のうち約5000件について、リースに該当するかを判定する必要があった。同社はこの膨大な作業にどう対応したのか。
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新リース会計基準への対応に、多くの企業が頭を悩ませている。中でも、多店舗を運営するなど、多くの不動産を賃借している企業では、これまでオフバランス処理されていたオペレーティング・リースなども原則としてオンバランスする。個々の契約がリースに該当するかを確認する必要があり、業務への影響も大きい。
「スポーツデポ」「ゴルフ5」などのスポーツ用品店を全国で400店舗以上展開するアルペンも、その一社だ。
同社が保管する契約書は1万件超。そのうち、新基準の対象かどうかを判定する必要があった契約書は約5000件に上り、これらの判定を財務部の3人で担うことになった。1件当たりの判定には約40分かかり、単純計算で合計約3300時間かかることになる――3人で対応するには膨大な作業量だ。
そこで、同社は一次判定を任せるためにAIの活用を開始。1件当たり約40分かかっていた時間を、約1分に短縮した。膨大な判定作業を効率化した同社は、AIをどのように業務に組み込んだのか。
アルペンを悩ませた、約5000件の「リース判定」 3人でどう対応する?
新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用され、アルペンでは同年7月からの適用を予定している。
新基準では、これまでオフバランス処理されてきたオペレーティング・リースなども含め、短期・少額などの例外を除き、原則としてリースを「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上する。これに伴い、まず契約ごとに、その契約が新基準のリースに該当するかを確認する工程が発生する。
アルペンで新基準への対応を担うのは、財務部の決算グループ2人と、契約書の管理を担う法務・株式グループの1人の計3人。決算グループマネジャーの市川将之氏もメンバーの1人だ。
保管する契約書1万件超のうち、判定対象となる契約書は過去分を含め約5000件に上った。判定に当たっては、契約の対象となる資産が特定されているか、その資産の使用によって生じる経済的利益を享受する権利があるかを読み解く必要がある。さらに、その資産をどのように、何のために使うかを決める権利があるかも確認する。
「当初は人の手で判定する想定でした。ただ、基準を詳しく調べるにつれ、全ての契約を手作業で確認するのは難しいと考えるようになりました」と市川氏は振り返る。
そこで、作業を効率化するシステムの導入を検討し始めた。
「3300→80時間」に AIによる「一次判定」の成果
アルペンが導入を決めたのは、経理AIエージェントを提供するTOKIUM(東京都中央区)の「TOKIUM AI新リース判定」だ。契約書をアップロードすると、AIが新基準上のリースに該当するかを判定する。
サービス選定の判断材料になったのは、自社の契約書を使って試せるデモだった。市川氏は導入前に操作し、処理の速さや使い勝手を確かめた。
「試してみると、私たちが想定していなかった判定結果もありました。自社の契約書でどのような結果が出るのかを確かめられたことで、導入後の業務を具体的にイメージできました」
導入したのは2026年5月。AIに一次判定を任せ、担当者が結果を確認する流れにした。AIが示した契約書の該当箇所を人が確認し、判定結果を判断する。担当者が契約書を最初から読み、必要な記述を探す手間を抑えられるのだ。貸借対照表に計上する金額は、監査法人との確認も含めて最終的には人が決める。AIが会計処理そのものを決める仕組みではないこともあり、社内ではAIの利用に対する大きな抵抗はなかったという。
同社の試算では、約5000件を人の手で判定すると1件につき少なくとも40分、合計で約3300時間かかる。一方、AIによる一次判定は1件約1分、合計約80時間。一次判定だけで約3200時間の差が生じる計算だ。
「今回の効果は、従来の業務時間を減らしたのではなく、新基準への対応で加わる作業を抑えられたことだと捉えています」
9月の取材時点で、過去分の契約書のアップロードとAIによる判定は終えているという。
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