障害者雇用、“質ばかり重視”する企業が陥る「盲点」とは? 「本業で雇用」だけが正義ではない、これだけの理由:働き方の見取り図(3/3 ページ)
障害者雇用ビジネスを巡り、さまざまな課題が指摘されている。一方、同ビジネスを通じて働く障害者は1万人を超える。この仕組みを、企業はどう捉えるべきなのか。
障害者雇用で「新しい仕事」をつくる 規制と成長をどう両立するか
一般的に、本業とは異なる事業への進出は、新規事業として取り組むことになります。成果が出るまでに時間を要し、長く赤字が続くようなケースもあります。障害者雇用のために本業とは異なる事業へ進出する場合、利益などの実績を早期に求めることは、雇用創出の可能性を奪うことにつながりかねません。
障害者雇用ビジネスを通じて就業している障害者は、すでに1万人を超えています。ただ内実は玉石混交で、不届きな事業者の存在も見てとれます。利用料だけ受け取り雇用管理を丸投げさせるようなケースは、法定雇用率を金で売る行為と見なされても仕方ないように思います。PCを使った研修だけを受けさせた後、十分な仕事を与えないといった事例も報告されています。
就労継続支援事業所を含む障害福祉サービス事業者の中にも、公的給付の不正受給などで行政処分されているケースがあります。障害者雇用ビジネスについて、適切な事業者と不適切な事業者を一括りにし、業界全体を悪いものと決めつけるのは行き過ぎです。重要なのは、不適切な事業者を排除し、健全な事業者を育成していくことです。
その点、今回厚生労働省が示した、届出の義務化やガイドラインの制定などを含む規制案は、望ましい方向だと思います。また、業界自身が自浄作用を働かせていく取り組みの重要性も今後ますます高まっていくはずです。障害者雇用ビジネスの業界団体である日本障害者雇用促進事業者協会は、独自の適格事業者認定制度を設け、好事例集を公開するなどの活動を進めています。
望ましい職場の在り方を考える上では、障害の有無にかかわらず、誰もが地域や社会の中で普通に生活し、能力を発揮できる「ノーマライゼーション」の考え方も重要です。
障害者雇用ビジネスが取り組んでいるような、先に従事しやすい仕事をつくり出してから仕事の意義を高めていく手法は、障害の有無にかかわらず誰もが能力を発揮できる社会を考える上でも、一つのアプローチになり得るのではないでしょうか。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者、業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員の他、経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声を調査。レポートは300本を超える。雇用労働分野に20年以上携わり、厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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