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障害者雇用、“質ばかり重視”する企業が陥る「盲点」とは? 「本業で雇用」だけが正義ではない、これだけの理由働き方の見取り図(2/3 ページ)

障害者雇用ビジネスを巡り、さまざまな課題が指摘されている。一方、同ビジネスを通じて働く障害者は1万人を超える。この仕組みを、企業はどう捉えるべきなのか。

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障害者雇用で見落とされる「量」の問題

 これらの問題点が、障害者雇用ビジネスを良くない事業と見なす風潮につながっている面があるように感じます。同様の問題は、障害者雇用の促進と安定を目的とする特例子会社などでも指摘されています。

 一方、障害者雇用ビジネスや特例子会社などの取り組みは、障害者の雇用の受け皿となっていることは間違いありません。その大きな理由の一つが、障害者が就業しやすい仕事と就業環境をセットで提供するというアプローチをとっている点です。

 もちろん、本業に関わる既存業務の中から障害者が担当しやすい業務を切り出すなどして、障害がない社員と同じ場所で仕事をすることが目指す姿の一つでしょう。しかしながら、課題が少なくとも2つあります。

 1つは「職場環境」の問題です。例えば、都心のオフィス街に職場がある場合、人混みの中を通勤しなければなりません。障害の特性によっては、人混みや雑踏の中での移動が大きな負担になる人もいます。もう1つは「業務切り出し」の限界です。障害のある人に担当してもらおうと切り出した業務の中には、今後AIなどの機械に代替されていく可能性があるものも含まれます。テクノロジーが発展するほど、代替範囲は広がっていくはずです。

 既存業務からの切り出しだけでは、障害者が選択できる仕事幅は広がりにくくなってしまいます。それに対し、農園やサテライトオフィスのように「障害者が就業しやすい仕事と環境を新たに創出する」という障害者雇用ビジネスのアプローチは、雇用の受け皿そのものを拡大する可能性を秘めている面があるのです。

 こうした手法には「量より質が重要だ」という批判がつきまといます。本業と無関係な仕事で雇用人数だけを増やしても、働き手のやりがい(質)が損なわれては意味がない、という指摘です。確かに、適切な雇用管理や働きがいといった「雇用の質」を高めることは極めて重要です。しかし、現状をデータで見ると、そもそも働く場の「量」が絶対的に不足しているという現実が浮かび上がります。

 国勢調査によると、2025年の総人口は1億2305万人です。一方、雇用者総数は6177万人(労働力調査詳細集計より)で、総人口に占める雇用者の割合は単純計算で50.2%となります。

 それに対し、同年に内閣府が公表した障害者白書から算出した障害者数は推計値で約1153万人です。複数の障害に該当する人がいるため単純合計にはなりませんが、2025年6月1日時点の民間企業における雇用障害者数70万4610人は、障害者数の6.1%に相当します。全体の雇用者割合と比較すると、8分の1以下の水準になります。

 単純に比率差だけで考えれば、障害者の雇用創出は障害がない人の8倍以上難しいと見ることもできる数値です。もちろん統計の対象も定義も異なり障害の程度も考慮すると一概には言えないため単純比較はできませんが、障害者の雇用機会を増やす余地がなお大きいことを示す一つの材料といえます。だからこそ、障害者雇用では「質」の向上だけでなく、まず「量」を増やす視点も必要ではないでしょうか。

 会社にとって有益な仕事になるかどうか未知数の段階であっても、先に障害者が取り組みやすい仕事をつくり出して、通いやすい場所に職場を設置する。その後、業務の改善や新たな事業への展開などを通じて、利益や社内の生産性につながる仕事へと育てていくという取り組みは、雇用創出の可能性を大いに広げるはずです。

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