障害者雇用、“質ばかり重視”する企業が陥る「盲点」とは? 「本業で雇用」だけが正義ではない、これだけの理由:働き方の見取り図(1/3 ページ)
障害者雇用ビジネスを巡り、さまざまな課題が指摘されている。一方、同ビジネスを通じて働く障害者は1万人を超える。この仕組みを、企業はどう捉えるべきなのか。
法定雇用率が2.7%へ引き上げられた裏で、就業者が1万人を突破した「障害者雇用ビジネス」――農園の提供やサテライトオフィスの運用など、企業と障害者のミスマッチを埋める受け皿として拡大を続けています。一方で、世間からは「法定雇用率の達成を目的とした数合わせ」「本業や一般社員からの隔離」といった厳しい視線が注がれることもあります。
厚生労働省は審議会で、障害者雇用ビジネス事業者に届出を義務付けたり、ガイドラインに沿うことを努力義務にしたりといった規制案を示しました。
現在、性別や年齢を問わず「働きたくても働く場所がない」と感じている人は少なくありません。しかし、有効求人倍率は1倍を超え、求人数が求職者数を上回る状態が続いています。人手が必要なのに採用できない会社と、働きたいのに仕事がない働き手が同時に存在するというミスマッチが起きています。
障害者雇用では、障害の特性や必要な配慮なども考慮する必要があるため、ミスマッチがより生じやすい面があります。にもかかわらず、障害者雇用ビジネスを通じて就業している障害者は1万人超に及びます。
なぜ、障害者雇用ビジネスは多くの障害者の就業先となっているのでしょうか。背景に目を向けると、障害の有無に関係なく、職場と働き手の間で生じているあらゆるミスマッチ解消のヒントが見えてきます。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演多数。
障害者雇用ビジネスで就業1万人超 その裏にある2つの問題とは?
障害者雇用ビジネスの業態は多様で、実態が分かりづらい部分があります。厚生労働省の労働政策審議会障害者雇用分科会では、このビジネスについて「障害のない社員と異なる場所で障害者の勤務を支援し、採用や配置といった雇用管理の支援などを反復継続して行う事業者」という趣旨の定義案が示されました。
障害者雇用ビジネスに対して聞かれる大きな批判の一つは、法定雇用率の達成のみを目的にサービスが利用されているという指摘です。法定雇用率とは、会社が雇用する労働者に占める障害者の割合として法律で定められた率のことで、2026年7月から2.7%に引き上げられています。常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主で、法定雇用率を下回る場合には、不足人数に応じて納付金が徴収されます。
法定雇用率を満たすためだけに障害者雇用ビジネスを利用するのは、障害者を数字達成の道具と見なし、能力発揮を妨げるような行為です。到底認められるものではありません。ただ、法定雇用率を達成している会社は2025年6月1日時点で46.0%と、思うように進んでいない状況です。
一方で、労働政策審議会障害者雇用分科会資料によると、障害者雇用ビジネスを通じて就業している障害者は、2025年10月末時点で1万1141人に及びます。こうした事業では、単に人材をあっせんするのではなく、農園やサテライトオフィス、飲料品の製造といった業務内容と就業場所をセットで利用企業に提供しています。
農園は屋内外に設置され、野菜などを栽培しています。利用企業の社食で使用されたり、福利厚生として社員に提供・販売されたりと用途は多様です。サテライトオフィスでは利用企業内部にある事務業務などを切り出したり、外部から業務委託を請け負ったりしています。飲料品は、自社での提供だけでなく、ノベルティとして活用することもあります。
ただ、ここに問題視されるポイントが2点あります。1つは、利用企業で働く障害のない社員と切り離されることによる弊害です。同じ会社の社員であるはずなのに顔を合わせる機会がないと、共に働く仲間という認識が持ちづらくなります。障害への理解は深まらず、協力して成果を出していくためのノウハウも職場内に蓄積しづらくなります。
もう1つは、仕事が形骸化する懸念です。農園で働く障害者を雇用したとしても、会社が機械メーカーやIT関連などの場合は、本業とは関係がありません。中には、農作物を生産しても十分に活用されず、破棄されるケースもあると報告されています。そんなことをすれば能力を発揮する実感が得られず、働き手の尊厳を損なうことにもなり、障害者雇用はコストとしか見なされなくなってしまいます。
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