マツダ「29歳元ゲームプログラマー」が挑んだ新型CX-5開発 『頭文字D』が好き――異色の若手エース、仕事術と憧れ:教えて!あの企業の20代エース社員
好調なマツダを支える新型CX-5の開発に携わる一人が、同社の20代エース・山原龍次さんだ。ゲーム業界で約7年のキャリアを積んだ後、未経験で自動車業界に飛び込むという、異色のキャリアを持つ山原さんに、仕事の価値観を聞いた。
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未知の業界への転職は、ハードルが高い。これまで培った技術は通用するのか。社風や働き方が違いすぎて適応できるだろうか。そんな心配よりも「ワクワクの方がはるかに高かった」と話すのは、28歳でゲーム業界から一転、マツダに入社した山原龍次さん(クルマ開発本部 情報制御モデル開発部 コネクティッドソフトウェア開発グループ)だ。
山原さんは入社後、新型CX-5の開発に参加。この新型CX-5がグローバルでの出荷台数増加をけん引し、マツダの第1四半期の売上高(1兆2857億円)は過去最高を更新した。
「プログラマーは年々、しゃべらなくなってしまう人が多い。コミュニケーションと積極性を大切にしています」──未経験で自動車業界に飛び込むという、異色のキャリアを持つ山原さん。現在29歳の次世代リーダーが重視する仕事の価値観に迫る。
『頭文字D』が導いた異業種への挑戦
山原さんはゲーム系の専門学校を卒業後、新卒でゲーム開発会社に入社した。クライアント側プログラマーとして、Nintendo Switchといったコンシューマーゲームやアーケードゲーム、Webゲームまで、多様なプラットフォームでの開発に約7年携わってきた。
「新卒で入った会社に不満はありませんでした。ですが、もっと人数規模の大きい案件をやってみたいという思いから転職を決意しました」(山原さん)。転職を考えた当初、志望先はゲーム業界に絞っていたという。しかし、エージェントから「マツダがソフトウェア人材を探している。受けてみては?」という予想外の提案を受け、子どもの頃からの「車が好き」という気持ちを思い出した。
「父の影響で昔から車が好きでした。特に『頭文字D』に登場するRX-7が好きで、マツダという会社に憧れがありました。自分が好きな会社にチャレンジできるなら受けてみたい。その一心で、迷わず応募を決めました」(山原さん)
未知の業界への不安よりも「マツダで働けるかもしれないというワクワクの方がはるかに高かった」と当時を振り返る山原さん。面接で出会ったマネジャー陣のフラットな雰囲気も背中を押し、ゲーム業界から自動車業界への転身を決意した。
「楽しさ」→「安全・正確」へ 転職後は「優先順位」に苦戦
山原さんは入社以降、車内ディスプレイに表示されるソフトウェアの開発を担当している。具体的には、ゲームエンジン「Unity」を使用し、画面上の3Dグラフィックス表示機能の設計・実装を手掛けている。
もともと前職でもUnityを使用していたという山原さん。異業種への転職に挑んだ山原さんをUnityという共通言語が支えた。「Unityは前職で長年使い込んでいたため、実装時の挙動予測、バグやエラーが発生した際の原因特定、対処法といった実践的なノウハウが身に付いていて、今の仕事でも役立っています」(山原さん)
Unityを駆使した開発現場では、デザイン部門との緻密な連携が求められる。
「デザイン部門はビジュアルを求めますが、実装側としては処理負荷を抑え、システムの安定性を担保しなければなりません。例えば、モデルAとモデルBが重なって表示される際、見えない部分をいかに効率的にカットして負荷を下げるか。デザインの意図を汲みつつ、技術的に最適化するための議論を日々重ね、開発を続けています」
異業界への転職によるギャップや苦労も多かったと語る山原さん。真っ先に直面したのは「優先順位」の違いだった。
ゲーム業界は「いかにお客を楽しませるか」が最重要事項だ。一方、自動車業界では、乗客の命を預かる移動手段として、自動車の「安全」「安心」「正確」が絶対条件となる。「ゲーム業界では『楽しさ』に振るのが正解ですが、車は命を預かるもの。この根本的なマインドセットの切り替えをするために、日々の業務で常に自分に言い聞かせてきました」(山原さん)
加えて、業界特有の専門用語や社内略語のキャッチアップにも苦労したという。「入社直後は会議で、半分以上何を言っているのか理解できなかったことを今でもよく覚えています(笑)」(山原さん)
入社早々にこうした状況におかれると、尻込みしてしまいがちだが、山原さんは違った。「分からない用語や仕様はすぐ質問することで、知識を増やしていきました」(山原さん)。こうした姿勢の背景には、仕事で大事にしている2つのことがある。
「コミュニケーションと積極性を大切にしています。プログラマーは年々、しゃべらなくなってしまう人が多い。年齢や立場に関わらず発言したり、社内外のイベントや他部署との交流に進んで参加したりすることを、あえて意識しています」(山原さん)
直属の上司2人の背中に憧れ
入社から約1年。山原さんは直属の上司2人を目指す姿だと話す。高い技術力と知識量を持ちながら、マネジメントもこなす姿に非常に刺激を受けており、特定領域のスペシャリストではなく、現場経験をベースにチームを引っ張る「ジェネラリスト」を目指したいと考えるきっかけになったそうだ。
また、マネジメント業務にも魅力を感じているという。「自分一人でできることには限界があります。現場のエンジニアとして培った知見をベースに、チームの力を最大限に引き出せる存在になりたいです」と山原さんは力を込める。
マツダのクルマづくりにおいて、根底にあるのは「お客さまに喜んでいただける体験を作る」ことだ、と山原さんは語る。かつて抱いた『頭文字D』で走るRX7への憧れは今、自身が心血を注いだ新型CX-5にも生きている。お客さまの「この車、いいね」という声を楽しみに、今後もマツダのクルマづくりをソフトウェア開発の面から支えていきたいという。
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