チップ1枚に3カ月!? 「クリーンルーム」はどんな部屋? 意外と知らない「半導体の作り方」:『図解で深掘る きちんとわかる 半導体』(2/2 ページ)
AI時代に注目が集まる「半導体」。製造には数百の工程と、数カ月の時間がかかる。小さなチップを作るために、なぜこれほどまで手間がかかるのか。「半導体の作り方」を解剖する。
前工程:数百の工程、3カ月かけてチップ1枚を作る
設計工程で作成したフォトマスクを使い、ウエハー上に回路パターンを作り込むのが前工程です。
前工程は、細かく分けると数百もの工程を繰り返す極めて複雑なプロセスです。製品にもよりますが、ウエハーを投入してから完成するまでには通常2〜3カ月、場合によっては半年近くを要することもあります。
具体的な工程は、ウエハー上の異物を除去する洗浄、絶縁膜や金属膜を形成する成膜、回路パターンを転写するフォトリソグラフィ、不要な膜を削るエッチング、電気的特性を制御するイオン注入、結晶構造を回復させる熱処理、表面を真っ平にする平坦(へいたん)化などで構成されています。
さらに、設計通りに構造ができているかを確認する検査や、最終的な電気特性検査が行われ、各工程間をつなぐ搬送も重要な役割を担います。
半導体チップは膨大なトランジスタとそれをつなぐ配線で高層ビルのような立体構造をしています。そのため、成膜やフォトリソグラフィ、エッチングといった工程を何度も繰り返して、製造されます。
この前工程の成否を決めるのが、歩留りと呼ばれる良品の割合を示す指標です。構造が極めて微細な半導体にとって、わずかなゴミやダメージは致命的で、どうしても不良品が発生してしまいます。
そのため、100%の歩留りを実現することは事実上不可能です。歩留りの向上は生産効率に直結し、コスト削減と競争力強化の源泉となるため、半導体工場においては最優先の経営課題となります。
半導体製造に欠かせない「クリーンルーム」という極限環境
前工程はクリーンルームと呼ばれる極めて清浄な環境で行われます。ここでは、目に見えないほど微細な粒子も「HEPAフィルター」(High EfficiencyParticulate Air Filter)によって徹底的に除去されます。例えるなら、家庭用空気清浄機の超高性能版が常に、大量に稼働しているような状態です。
また、使用される水も、不純物を極限まで取り除いた超純水が使われます。そしてクリーンルーム内において、最大の汚染源は皮肉なことに人間です。近年の半導体工場では人間の介在を最小限にするための自動化が加速していますが、依然として熟練の技術者によるメンテナンスや管理が、高い歩留りを支えるカギとなっています。
「3ナノ世代」「2ナノ世代」――半導体のプロセスノードとは
半導体の製造工程において、ウエハー上に極めて微細な回路を形成する技術そのものをプロセス技術と呼びます。洗浄や成膜、フォトリソグラフィなどの各技術をどういった条件で、いかに組み合せるかがカギとなります。
そして、このプロセス技術の進化の度合い、つまり世代を示すラベルとして使われるのが「プロセスノード」です。経済ニュースなどで「3ナノ世代」や「2ナノ世代」といった言葉を見聞きしたことがあるかもしれません。
基本的な原則として、このプロセスノードの数字が小さくなるほど、限られたチップ面積により多くのトランジスタを詰め込むことができます。これにより、スマートフォンやAIサーバの処理能力が飛躍的に向上すると同時に、消費電力を大幅に抑えることが可能になります。
最先端のプロセスノードでチップを製造・確保できることは、そのまま企業の競争力に直結する極めて重要な指標となっています。
しかし、ここで押さえておくべき重要な事実があります。それは、現在のプロセスノードの数字は、実際の物理的な寸法を表していないということです。
かつて、このナノメートル(nm)という数字は、トランジスタのゲート長という特定の場所の実際の長さを指していました。ところが、回路の線幅が原子の大きさに近づき、微細化の物理的な限界を突破するために立体的なトランジスタ構造(FinFETやGAAなど)が採用されるようになると、単純な平面の寸法でチップの性能を測ることができなくなりました。
そのため、現在示される「○○ナノメートル」とは、過去の平面基準で換算した場合、○○ナノメートル相当の性能や集積度を持つ最新世代という意味合いが強く、各メーカーが自社の技術力を市場にアピールするためのマーケティング用語としての側面が大きくなっています。
従って、同じ○○ナノメートルと表示されていても、企業間で実際の構造や性能は異なります。現在では、表面的な数字だけでなく、電力効率や歩留りを含めた総合的な価値を見極めることが求められます。
『図解で深掘る きちんとわかる 半導体』
著者:ずーぼ
半導体プロセスエンジニア。現在は半導体工場で働きながら、半導体業界の情報をブログ、YouTubeで発信する。YouTube「半導体業界ドットコムch」は登録者数2万人を超える。
書籍『図解で深掘る きちんとわかる 半導体』
半導体の基礎から製造の仕組み、業界を支える企業同士のつながりまで、テキストと図版で体系的に解説。NVIDIAがけん引するAI向け半導体の進化や、日本の半導体産業の動き、業界動向やトレンドも紹介する。発売から2週間で重版決定。
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