しまむら絶好調の理由は「物価高」だけにあらず? 安売りを続けられる納得のカラクリとは(4/4 ページ)
しまむらの業績が絶好調だ。物価高で価格優位性のあるしまむらに消費者が流れたという考え方もできるが、小売り業界に詳しい佐久間俊一氏は「しまむらがスゴいのは、もっと別の点にある」と分析する。どういうことか。
しまむらの店舗運営を支える「スゴい制度」とは?
低価格企業では、コスト削減が現場の負担増につながることがあります。しまむらは業務を標準化・単純化・専門化・仕組化する「4S」を掲げ、店長1人とパート社員を中心に店舗を運営してきました。本部が作業手順を統一することで、店舗ごとの経験や勘への依存を減らし、教育時間も抑えています。
注目したいのは、標準化が固定されたマニュアルで終わっていない点です。同社には「改善提案」という仕組みがあり、従業員から年間約2万件の改善提案が寄せられているとのことです。現場の小さな工夫を集め、効果があれば全店の標準へ変え、マニュアルが常にブラッシュアップされていくサイクルなのです。全国規模のチェーンでは、1店舗で数分の短縮でも、全店に広げれば大きな生産性向上になります。現場発の改善と全社標準化が循環している点に、模倣しにくさがあります。
販促の内製化も同じ考え方で捉えられます。2027年2月期第1四半期の広告宣伝費は売上高の1.6%で、前年同期と比較して7.5%減りました。同社は、デジタル販促の推進とコンテンツ制作の内製化を要因として挙げています。会員向けメールの開封率は53.7%、開封者のうち来店した人の割合は19.3%など、顧客の反応を数値化し、店舗への来店に軸を置いていることが見てとれます。
しまむらのEC売上高は2026年2月期に196億円となり、全社売上高に占める割合は2.8%です。2027年2月期第1四半期のEC売上高は53億円で前年同期から30%も増え、店舗受取比率は88.3%です。顧客はオンラインで商品を探し、近くの店で受け取ります。店舗受け取りはECから実店舗への送客となり、受け取り時に店内の商品を見てもらう接点も生みます。
全国に2000店舗以上も広がるグループのネットワークが配送の受け皿となり、新たな購買を生む接点にもなっています。郊外を中心とする店舗網が、顧客獲得コストや配送負担を抑える資産として働いているわけです。
しまむらが好調なのは「物価高」だけが理由ではない
今回の内容をまとめると、しまむらの好調を「物価高によって低価格店が選ばれた結果だ」と考えるだけでは、本来の価値を見落とします。低価格を維持しながら客数を増やし、PB・JB・キャラクター商品で来店理由をつくり、完全買取の商品を自社物流と店舗間在庫移動で売り切る。標準化された店舗運営でコストを抑える。これらが連動した結果、値下げ率や在庫ロスを抑えながら利益を確保できているのです。
小売業の価格競争力を長く維持するには、売れ残り、作業時間、物流費、広告費といった顧客に見えないコストを減らす必要があります。その成果を価格へ戻すことで客数が増え、規模の効果を次の改善へ再投資できます。売上高7000億円という節目は、しまむらが「安さ」を継続できる経営の仕組みを築いてきたことを示しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
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