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「クレームこそ最大の商機」 合成紙大手ユポが半世紀貫く“コト売り”と、AIによる暗黙知継承(1/2 ページ)

大手ITが競う「コト売り」を設立以来半世紀にわたって現場で体現してきたのが合成紙大手ユポだ。光学シートから医療用トリアージタグまで用途を広げてきた同社の強みは、「クレームこそ最大の商機」と言い切る課題解決力にある。営業・開発・技術・共創推進の4部門が連携する組織改革と、ベテランが培った膨大な「トラブル対応の暗黙知」をAIで継承するDXの裏側に迫る。

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 日立製作所やNECなど大手ITベンダーがこぞって掲げる「コト売り」(共創モデル)。実は合成紙大手ユポ(東京都千代田区)は1969年の設立以来、この伴走型ビジネスを半世紀にわたって現場で体現してきた。光学機器の反射シートから医療現場のトリアージタグに至るまで、顧客の困り事に対応し、トラブルが発生しても解決するまで寄り添うビジネスモデルだ。

 「クレームこそ最大の商機」と言い切る内藤勝弘社長は、営業・開発・テクニカルサービス・共創推進の4部門が連携する独自の組織体制を構築してきた。トラブル対応を通じて積み上げた膨大な知見やベテランの暗黙知を、同社はいかにしてAIで次世代へ継承しようとしているのか。内藤社長と宮口卓也戦略企画本部長に聞いた。

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左からユポの宮口卓也戦略企画本部長、内藤勝弘社長、ブランディングを担当したエイトブランディングデザイン代表の西澤明洋氏)

広がる「顧客起点」のソリューション 用途が生まれるきっかけは?

――ユポは印刷用紙として生まれた素材ですが、印刷とは全く関係のない光学機器の反射シートや、医療現場のトリアージタグなど多様な用途へ広がっています。こうした用途は、どのように生まれるのでしょうか。

内藤: 顧客が何かしら困り事を抱えて素材を探す中でユポに行き当たり、自分たちで加工して試すケースが非常に多いのです。

 当社は印刷用紙としてユポを提供し始めましたが、白くて光を反射する機能が評価され、今では植物工場やLED電球の裏側の反射シートとしても使われています。当初は、そんな用途は全く想定していませんでした。

 災害時に傷病者の状態を識別するトリアージタグにも使われています。トリアージタグには、雨を始めとした現場の過酷な環境に対応できる耐久性が不可欠です。

 顧客から「ユポはどう管理されているのか知りたい」と呼び出され、顧客企業を訪問して初めて自社製品が使われていることを知るケースもありました。取引先の業界基準を学びながら、裾野を広げてきたのです。

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ユポは災害時に傷病者の状態を識別するトリアージタグにも使われている(ユポ提供)

「売るな、課題解決に飛び込め」 困り事に寄り添うビジネスモデル

――顧客の要望に応える中で、製品の改良を重ねてきました。その結果、製品のバリエーション(仕様グレード)が非常に多くなったそうですね。

内藤: 私が現場にいた頃は、製品グレードを5つか6つ覚えていれば事足りていました。ですが今は数が増え、とても覚えきれません。顧客の困り事に合わせて、新しいものを作ってきたからです。

――そうなると、営業と研究開発、テクニカルサービスなど部署間の連携が極めて重要になりますね。

内藤: まさに部署を横断した課題解決が重要になります。

 当社は開発と営業の間に、テクニカルサービス担当がおり、基本的に彼らが間に入ります。営業といっても、当社の営業は紙の流通網(代理店など)を通じて販売するため、単に商品を売り込んだり価格を交渉したりするのが主業務ではありません。機能を紹介し、どう使えるかを顧客と一緒に考え、現場の中に入り込んでいくことが役割です。

 価格交渉や製品のお届けは代理店(商社)が担ってくれますから、当社はどちらかというと、新しい使い道(用途)を作り出す側がメインです。「これはこの用途専用です」と決めつけず、ポケットをたくさん持っていて、これが駄目ならこちらを出す。そうやって困り事に寄り添っていくのが当社のやり方です。

「クレームを商機に」 営業・開発・技術が一体で動く組織へ変革

――その伝統的なアプローチをより強化するために、近年は組織体制そのものを見直したそうですね。具体的にどう変えたのでしょうか。

宮口: はい。実はこの2年間で、大きく組織体制を変えてきました。当社にはもともと「一人で全部できるように」という昔からの教育と考え方があり、一人の営業が全ての業務を抱え込むスタイルだったのです。ですが、顧客の相談が高度化・多様化する中で、それでは限界がきます。

 そこで教育や構造を改め、営業の中に開発部隊やテクニカルサービスが担っていた機能を一部入れ、営業自身が高度なソリューションを提案できる形にしました。逆に開発の側にも市場開発機能を持たせ、双方向で種を温めながら市場性を確認していく役割を持たせています。

内藤: さらに、7月に実施したリブランディングに合わせて「価値を共に創る」という考え方に沿った専門部署「共創推進」を作りました。「真正面から顧客と向き合い、一緒に価値を作ります。何でもご相談ください」と社外に打ち出したわけです。これで営業、テクニカルサービス、開発に共創推進を加えた4つが一体となって動く体制が整いました。

 一人の営業が時間のかかる長期案件も、目の前の短期案件も同時に抱え込んでいては持たないですから、時間のかかる案件は専門部署でじっくり温め、営業は用途の裾野を広げる方に注力してもらうという「役割の分業化」を進めたのです。

――「仏作って魂入れず」と言いますが、組織や体制を変えたとしても、そこに実質を伴わせられるかどうかは別の問題です。部門をまたいだ連携を機能させるために、何が必要だと考えていますか。

内藤: 言葉で「魂を入れよう」と意識したところで、形だけになり、真の連携は生まれないと思います。ただ、ユポという素材は昔から、決して「誰でも簡単に扱える万能な素材」ではありませんでした。特殊だからこそ、導入現場で必ず何かしらの課題やトラブルが起きます。それでも事業を伸ばすためには、営業・開発・技術が部門の垣根を越え、何とか現場で解決するしかなかった。それが当社の半世紀にわたる歴史です。

 例えば「うまく印刷できない」という現場の悲鳴があれば、印刷できるようになるまで顧客にずっと寄り添い続ける。そうした経験が社内に蓄積され、周りもその姿を見て育ってきたため、自然と同じ行動が取れるのだと思います。私自身も若手の頃は、トラブルが起きたら解決するまでお客さまの元から帰ってきませんでした。「どうにかして使ってもらおう」と必死に知恵を絞る中で、また別の新しい用途やアイデアが生まれていく。だからこそ、ユポにとって「クレームは最大の商機になる」のです。

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バス停や電車内の高機能広告にも使われている(画像提供:ユポ)

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