「危険アラートに気付けない」「報告に右往左往」をどう変えた? 大林組が「使い慣れたチャット」で現場DX(2/2 ページ)
アラートメールの見逃しなどの建設現場での課題に対し、大林組はビジネスチャット「direct」の高度利用に挑んでいる。独自開発の「通知bot」で各種システムと連携させ、現場の安全・品質向上を進める同社のDXに迫る。
メールに埋もれるアラートを救う 現場安全管理の「リアルタイム化」
大林組は、社内システムやIoT機器からの情報を現場へ迅速に届けるため、新たな仕組みづくりに着手した。
建設現場のデジタル化において実務上の壁となるのが、システムからの「通知の見逃し」だ。そこで同社は、自社システムなどとビジネスチャットを連携させる「通知botシステム」を開発。これは、連携させるシステム側にメール送信機能さえあれば、directに通知を飛ばせるという仕組みだ。
この通知botシステムとdirectの連携は、安全・環境管理の領域で力を発揮している。例えば、暑さ指数などの環境測定値を一元管理する「SisMil」(シスミル)や、現場の閉鎖空間でガス濃度をモニタリングする「ピット番長」といったシステムからの通知の配信に活用しているという。
従来は、これらのシステムが異常を検知した際のアラートを「メール」で通知していた。しかし、現場を動き回る職員にとって、大量のメールからアラートを見つけ出すのは難しく、見逃しのリスクがあった。
「現場の職員が普段見るdirectに通知が届くので、見逃しの防止に役立ちます。また、協力会社にも直接周知ができ、効率的な安全対策につながっています」(西田氏)
現場のやり取りを「情報資産」に
情報をdirectへ集約する取り組みは、品質管理や日常業務の効率化にも広がっている。
建物を支える杭(くい)の工事は、地中深くで行われる。大林組では、杭打ち機が取得するデータを可視化する独自システム「杭番人」を活用して目に見えない場所の品質も管理している。この杭番人とdirectを、通知botシステムを介して連携した。
「現場では、複数の杭打ち機が同時に動いて施工するケースがあります。それぞれの杭打ち機が取得するデータを遠隔でもリアルタイムで確認できるようになったことで、スムーズかつ効率的な現場運営ができるようになりました」(西田氏)
また、この仕組みは現場の物理的な広さがもたらす業務負担の解消にも一役買っている。全長約1キロに及ぶこともある現場では、敷地内の移動だけでも職員の体力と時間を奪う要因となっていた。そこで現場の職員がノーコードツールを使い、入場ルールや是正指示報告など20個以上の業務アプリを作成。そのうち10個のアプリ通知をbot経由でdirectに集約したことで、不要な職員の異動を減らすことができた。
「directにおける日々のやり取りは、現場の重要な『情報資産』といえます。この蓄積されたデータを、今後はAIやデータ分析と掛け合わせることで、より高度に有効活用したいと考えています」(西田氏)
コミュニケーション基盤から現場を支える資産へ――進化を続けるデジタル活用が、建設現場の課題を乗り越える力となっている。
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