OpenAIが「数学論文722本」を一挙公開 「AI企業の技術独占」に数学界が猛反発したワケ(2/2 ページ)
米OpenAIは、未公開の社内AIモデルが生成した数学論文722本を一挙公開した。リーマン予想やホッジ予想などの未解決問題に関する成果を含むが、単一指示で成果を出したモデルの詳細や再現方法は非公表のままだ。これに対し数学界からは、AI企業による技術の独占や研究プロセスのブラックボックス化、さらには「人間の理解」を軽視した開発姿勢に対する強い懸念と批判の声が上がっている。
「AI独占」に数学界から強い反発
今回の発表に先立つ9月、OpenAIは流体の動きを記述するナビエ・ストークス方程式に関する難問で、AIを活用した研究成果を発表していた。今回の722本の公開は、個別の難問への取り組みに加え、大量の研究成果をAIで生成する動きを示している。
一方、数学界からは研究の進め方や発表方法に疑問の声が上がっている。米プリンストン高等研究所(IAS)の数学者らが参加する独立組織「AGMAI」は10月6日、声明を発表した。
OpenAIに研究成果の公開方法について助言したものの、それは今回の成果を評価したり、OpenAIの研究手法を支持したりすることを意味しないと強調。成果の評価は、数学界全体で行う必要があるとの立場を示した。
同グループは9月29日に公表した指針で、AI企業に対し、非公開の社内モデルを使って高度な数学の未解決問題を解く研究を中止するよう要求していた。AI企業だけが高性能モデルを独占すれば、一般の数学者が研究成果を生み出す競争から取り残され、AI企業の成果を検証・理解するだけの立場に追いやられる恐れがあるためだ。
置き去りにされる「人間の理解」
数学界では、フィールズ賞受賞者25人が発表した公開書簡「A Severe Misalignment of AI in Mathematics」(数学におけるAIの深刻な方向性のずれ)も議論を呼んでいる。書簡は、AI企業が未解決問題を解くことを競う一方で、数学研究に不可欠な人間による理解や新しい概念の発展が軽視されていると批判している。
ドイツのIT専門メディアThe Decoderの報道によると、OpenAIは今後、AIが生成した数学の成果について研究者の理解を深めるため、ワークショップや学会などに資金を提供する方針だという。
本記事は、エクサウィザーズが運営するAI新聞内の記事「OpenAI、AIが生成した数学論文722本を一挙公開」(2026年10月8日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
著者プロフィール
湯川鶴章
AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
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