「管理職になんてなりたくない!」って本当? そのワケと「なりたくなる組織」の作り方(2/3 ページ)
管理職の約6割が「仕事を続けたい」と回答する一方、心身の疲弊を感じる管理職も少なくない。管理職を孤立させず、持続可能なマネジメントを実現するために、人事やメンバーは何ができるのか。
管理職の約4割が「役立った支援なし」 人事が見直すべきことは?
こうした現場の苦境に対し、人事側の支援は十分に機能しているのか。
調査によると「役立った(あってよかった)サポート」について「当てはまるものはない」と回答した管理職は41.0%に上った。また、管理職が最も必要としているはずの「業務負荷軽減の取り組み」を実施している人事担当者は17.0%にとどまった。
「組織から支えられている」という実感が高い管理職や、孤独感の低い管理職ほど、仕事を続けたいという意向が高い傾向がみられた。管理職の孤立を防ぎ、組織に支えられていると実感できる環境をつくることが重要だ。
その具体策として入江氏が提唱するのが「管理職の役割と業務の再設計」だ。まず、会社として「やらない仕事」や「部下に権限移譲する仕事」を明確にし、管理職が担う業務範囲を決める。また、労務対応や個別トラブルなど、判断に迷う事象については組織としてガイドラインを整え、管理職が1人で悩む負担を減らす。こうして、管理職が本来注力すべき「メンバーの業務支援と成長の支援」に時間を使えるようにする。
メンバーの育成を管理職だけに背負わせない工夫も大切だ。
「環境変化が激しい現在、生成AIの活用など新たに習得すべき知識やスキルを、管理職自身が持っているとは限らない。各メンバーの強みや育成課題も多様で、現場の個別対応だけでは限界がある」(入江氏)
人事が主導して、全社でのリスキリング研修や選択型教育プログラム、専門のキャリアコンサルタントによる支援、他部門の先輩が相談に乗るメンター制度などを用意する。こうした仕組みによって、育成の役割を現場だけに集中させず、管理職がメンバーに仕事を任せやすい環境を整えることが重要だ。
メンバーから提案が出る職場へ
管理職の抱え込みを解消するには、人事の施策だけでなく、部下がどのように組織に関わるかも重要だ。そこで注目されるのが、メンバーが主体的に行動し、組織や上司を支える「フォロワーシップ」である。フォロワーシップには、上司を実務面で支える「積極的支援」に加え、組織の課題や改善案を上司に伝える「建設的な批判的行動」も含まれる。
入江氏らの分析では、上司を積極的に支えるメンバーが多い職場ほど、管理職は育成や関係構築にやりがいを感じていた。
また、日頃からメンバーに積極的に支援されていると感じている管理職ほど、メンバーから建設的な批判や率直な意見が出ることで「チームとして成果を出せている」という手応えを感じる傾向にあった。一方、支援がない職場では、批判や苦言が増えるほど管理職のやりがいが低下した。
つまり、建設的な意見をチームを前進させる力に変えるには、まず管理職とメンバーの間に信頼関係があることが重要だ。
具体的な実践例として、A社では組織サーベイの結果を共有する際、まず管理職を席から外し、メンバーと外部トレーナーだけで対話する場を設けた。結果への率直な感想や職場のありたい姿を話し合い、管理職への期待や要望を整理。さらに、誰がどのように伝えるかも事前に練習した。その後、管理職を交えて、メンバーの代表が意見や期待を伝え、職場の未来について全員で議論した。
リクルートMSでコンサルティング1部マネジャーを務める加茂俊究氏によると、本音を言える安全なプロセスを踏んだことで、その場限りの対話に終わらず「日頃の業務でもメンバーから意見や改善提案が自然と出てくる関係性に変わった」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Z世代同士だからうまくいく」は幻想 若手任せのOJTが早期離職の引き金になるワケ
昨今、若手の早期離職が大きな問題となっている。さまざまな要因が指摘されているが、筆者は若手に任せっきりのOJTに原因があると考えている。その理由とは?
社員に「何者になりたいか」問い続ける──自律型人材を育てるためダイドーが重視する「5つの資質」
自律型人材の育成は、号令をかけるだけでは務まらない。ダイドーグループホールディングスでは、5つの資質を定め、それに基づいて自律型人材を目指すための働きかけをしてきたという。


