「水と食料の備蓄」だけで満足してはいけない 総務が見落とす企業防災の“落とし穴”:「総務」から会社を変える(2/3 ページ)
防災用品を備蓄している企業は多いが、果たしてそれらが有効活用できるような状態になっているのか。災害対策を考える上で、防災用品の購入以上に必要な考え方や対策を紹介したい。
自社だけで完結させない オフィスビル全体で進める役割分担
防災対策は、オフィスの形態によっても異なる。
オフィスビルに入居している企業の場合、自社だけで防災対策をするのでは不十分だ。館内放送や共用部の避難経路、エレベーターの停止時の対応、来訪者の避難誘導などは、ビルの管理事務所やほかのテナントとの連携が欠かせない。
そのため、平時から「誰が避難や待機を判断するのか」「誰が館内に情報を伝えるのか」「各社の被害状況を誰に報告するのか」「ビル側と各社がそれぞれどこまで備蓄品を用意するのか」といった役割分担を明確にしておく必要がある。
具体的には、管理事務所と各社の総務担当者による連絡会を設け、役割分担表や緊急時の連絡網を共有する。合同訓練を実施した後は、うまくいかなかった点を振り返り、対応手順を見直す。こうした取り組みを重ねることで、ビル全体の防災体制を強化できる。
社員の防災意識を高めることも重要だ。非常食を実際に食べる、安否確認システムに回答する、自社が入居するフロアから避難してみるなど、実際に体験する機会を設けたい。こうした経験は、マニュアルを読むだけでは気付きにくい課題を発見する機会にもなる。
特に合同訓練では、総務担当者が不在の場合や、携帯電話がつながらない場合など、想定外の条件を一つ加えるのも効果的だ。そうすることで、計画の穴を見つけやすくなる。
地域と築く「顔の見える」防災ネットワーク
自社ビルをオフィスとする企業では、周辺住民や近隣施設との連携にも目を向けたい。「何かあれば協力する」という善意だけでは、いざというときに動けないためだ。
2026年9月8日、名古屋市を襲った記録的な大雨では、平屋建ての保育園から園児30人が隣接する企業の3階へ避難し、全員が無事だった。この連携が機能した背景には、保育園が年に2回、その企業を避難先とする訓練を行っていたことに加え、日頃から園児と社員が交流し、顔の見える関係を築いていたことがある。有事の連携を機能させるには、平時からの準備が欠かせない。
地域と連携する上でまず実施したいのが、自治体の防災担当者、自治会、自主防災組織、近隣の学校・福祉施設などと顔を合わせることだ。その上で、災害時に提供できる場所、電源、資材・機材、受け入れ可能な人数などを確認すると同時に、対応できないことも明確にしておく。さらに、合同訓練などを通じて、漠然とした「助け合い」を具体的な行動につなげていく必要がある。
ただし、最初から正式な協定の締結を目指す必要はない。地域の防災訓練に参加する、自社周辺の避難場所や避難経路を確認する、近隣施設と災害時の連絡担当者を決めるなど、できることから始め、少しずつ協力関係を築いていきたい。
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