「水と食料の備蓄」だけで満足してはいけない 総務が見落とす企業防災の“落とし穴”:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
防災用品を備蓄している企業は多いが、果たしてそれらが有効活用できるような状態になっているのか。災害対策を考える上で、防災用品の購入以上に必要な考え方や対策を紹介したい。
防災を「コスト」から「事業継続の投資」へ
防災対策は、何も起きなければ成果が見えにくい。そのため、経営層から「本当に必要か」と問われることもある。
その際、総務に求められるのは、対策にかかる費用に加え、対策をしなかった場合のリスクと、対策の必要性を提案することだ。
まず、現状の備蓄品で何人が何日間過ごせるのかなど、自社の防災対策の現状と課題を整理する。次に、停電や断水が長引いた場合、従業員の安全や顧客対応、事業の継続にどのような影響が出るのかを具体的に示す。
その上で、リスクを減らすために必要な対策と費用を提示する。例えば、人命に直結する対策を「必須」、事業継続のために早期に取り組みたい対策を「優先」、防災体制を強化するための対策を「追加」として整理すれば、経営層も判断しやすくなる。
一度に完璧を求めると、金額が膨らんで動きづらくなってしまう。まず人命に直結する不足を埋め、次に訓練で分かった弱点を改善する。年度ごとの段階的な投資を提案することが、総務には求められている。
実は東日本大震災の日、筆者も人であふれた青梅街道をひたすら西へ歩いた。多くの人が一斉に帰宅すれば、緊急車両の通行や救助活動の妨げになり、社員自身が二次災害に巻き込まれる危険もある。災害時に社員が安全な場所で待機できるよう備えることは、こうしたリスクを減らすことにもつながる。
防災対策は社員の命を守り、事業の継続を支えるとともに、地域社会の安全にもつながる投資であることを経営層に理解してもらう必要がある。
「もし総務がいなかったら……」 担当者不在でも自律的に動く体制へ
今回は総務が対応すべき防災対策を紹介したが、全てを総務だけで完結させる必要はない。総務に求められているのは、社員一人一人が自分で判断して動ける体制を整えることだ。
これから能登半島地震や阪神・淡路大震災、東日本大震災など、過去の災害を振り返る機会が続くが、その時に「もし総務担当者が不在でも、社員は適切に行動できるだろうか」と問いかけていただきたい。
そうして問い続けることが、防災を単なる「非常食の備蓄」で終わらせず、いざというときに一人一人が動ける仕組みづくりへとつながるだろう。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 戦略総務研究所所長/早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の前代表取締役社長、前『月刊総務』の編集長。現在は、戦略総務研究所所長として、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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