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なぜ高収入の“超エリート集団”は一線を越えたのか プルデンシャル不祥事の深層:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)

プルデンシャル生命の不祥事を受け、成果主義の弊害やガバナンス不全といった「制度」の問題について多く議論されている。しかし、どれほど厳格な仕組みを整えても、それを動かすのは人間だ。本記事では、同社の事例を手掛かりに、エリート集団が陥りがちな「心の動き」に着目する。

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「選ばれた存在」という全能感がルールをまひさせる

 一方、期待通りの成果を上げ続けたエリートたちは、また別の心理的わなにはまっていきます。

 社内での圧倒的な評価、破格の報酬、そして顧客や周囲からの惜しみない称賛――。成功体験を重ねるうちに、彼らの心の中で「自分は選ばれた特別な存在であり、自分のやり方こそが正しく絶対なのだ」という強烈な「絶対感(全能感)」が生まれていきます。


成功の裏で生まれる“特権意識”

 この絶対感が肥大化すると「自分こそがルールだ」という意識が生まれます。会社のルールやコンプライアンスが「凡庸な人間を縛るもの」に見え始め、多少のルール違反や独自の解釈も許されるという特権意識につながっていくのです。

 それは同時に「今まで通りの成果を出し続けなければならない」という強いプレッシャーが生まれる瞬間でもあります。こうして「絶対感というプライド」と「成果を維持するプレッシャー」のダブルパンチを受けたエリートは、自ら不正の連鎖へと陥ってしまうケースも少なくないのです。

システムを過信せず「人」と向き合う経営を

 念のために書き添えると、私は報告書の分析と今後の指針を100%支持しています。

 しかし、どれほど優れた指針や制度を整えたとしても、肝心の経営陣に現場と向き合う姿勢がなければ意味がありません。成果主義はあくまで不正の引き金にすぎず、成果主義の徹底そのものが悪というわけではありません。しかし、数字という絶対的指標がうまく機能するには、経営陣が社員一人ひとりと向き合う「人の顔がある経営」に徹することが不可欠です。

 果たして、経営陣はどこまで現場のリアルな声に耳を傾けられていたでしょうか。現場を歩き、プレッシャーに苦しむ一人ひとりと向き合う瞬間があったでしょうか。なかなか結果が出ない社員に「あなたのこともちゃんと見ているよ!」という温かいメッセージを送ることがあったのでしょうか。

 今回の不正について、2019年ごろから内部通報が増えていたにもかかわらず、経営陣が十分な対応をしなかったことも非難されています。告発をスルーした本当の原因も、現場との心理的距離があまりに遠すぎたことが影響しているのではないか。そう思えてなりません。

 どれほど完璧な制度を整えても、それを動かすのも壊すのも「人の心」です。経営陣が現場へ足を運び、人間として社員と向き合うこと。それこそが、制度を過信するあまり人間らしさを見失った組織が、立ち返るべき原点なのです。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。

 新刊『「老害」と呼ばれたくない私たち  大人が尊重されない時代のミドル社員の新しい働き方』(日経BP 日本経済新聞出版)発売中。


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