AI活用で処遇改善、週休3日を導入 建設会社社長から介護事業を“起業”した経営者の「実行力」
建設会社社長という立場から、還暦を契機に介護事業を“起業”した。「このまま人生を終えていいのか」と始まった第二の人生を突き進み、今は第三の人生の幕を開けつつある。新しいことへのアンテナは敏感で、実行に移すスピードも変わらない。(聞き手 小川記代子)
建設会社社長という立場から、還暦を契機に介護事業を“起業”した。「このまま人生を終えていいのか」と始まった第二の人生を突き進み、今は第三の人生の幕を開けつつある。新しいことへのアンテナは敏感で、実行に移すスピードも変わらない。(聞き手 小川記代子)
下村隆彦(しもむら・たかひこ) 昭和18年生まれ。高知県出身。大阪工業大卒業後、48年に下村建設社長に就任。平成16年、現チャーム・ケア・コーポレーションを設立し、17年に第1号の介護付き有料老人ホームを開設。令和4年、東証プライム上場。現在は同社代表取締役会長兼CEO。大阪府豊中市(鳥越瑞絵撮影)
大阪の建設会社の社長、還暦をきっかけに起業
取材場所の介護施設は2006年(平成18年)に初めて手掛けた大規模な施設
2017年に第1号の介護付き有料老人ホームを建ててから、ここは5件目になります。128室という規模は初めてで、入居者を集めるため私と家族でチラシをポスティングした思い出があります。
大阪の建設会社の社長だった
祖父が興した会社を30歳で継ぎました。当時は売り上げが大きい会社がいい会社とされていました。ただ、売り上げのために無理をして工事をとっていると利益が出ない。思い切って売り上げ拡大を目指さず、堅実な利益が見込めるリニューアル工事に特化しました。苦しい時期もありましたが、人との出会いから大企業とのつながりができ、業績が安定しました。
順調な経営を続け、60歳を迎えた
悠々自適の生活でしたが、還暦をきっかけに人生を振り返ったとき「やり残したことがあるのではないか」という思いが頭をよぎりました。ここまで来られたのは自分一人の力ではない。いろいろな人の助けがあった。「残された人生で社会貢献ができる仕事をしたい」と思ったのです。
そんなとき、異業種交流会で2012年に施行された介護保険法の話を聞いた
介護事業に民間企業が参入できるというのです。「これだ」と思いました。家族は反対しましたね。妻には「介護なんてできない」と言われましたが、私が介護するのではない。マネジメントです。お客さんのニーズに合わせるという点では建設も介護も同じ。すぐに動き、話を聞いた2年後には第1号の施設を奈良・大和郡山にオープンさせました。
現在、首都圏、近畿を中心に118施設を展開するまでになった
自分が人生で介護事業をするとは、全く予想していませんでした。建設会社と介護事業は異業種で、全くイメージが違いますしね。しかし、何でもやればできます。後悔したことは全くない。増えていく高齢者を支えていく仕事、需要はまだあります。
人手不足への起死回生の一手
介護業界の問題は人手不足だ。数々の手を講じている
AI活用などDXを推進し、サービスを低下させずに少人数で運営できるような仕組みを作り、スタッフの処遇を改善しました。また、選択制で週休3日を導入したら、新卒の採用が急増しました。今は生産性アップを図るため、業務の専門化・分業化に取り組んでいます。ケアの難度に応じて処遇を変え、さらに全体の処遇も下げません。
数々のアイデアは自身の発案が多い
建設業時代から「常不信」、つまり「常識を信じるな」がモットーです。常識にとらわれず、よりよい方法を考える。新しく、面白い人や事業を見つけると、すぐに連絡を取ります。経営の根幹はスピードですからね。運もよかった。でも、運は努力した結果にしかついてきません。
第三の人生として新しい試みにも取り掛かっている
ヤングケアラーや、学力はありながら経済的に恵まれない子ども、障害者アーティストの支援に取り組んでいます。こども食堂もやっています。さらなる社会への恩返しです。
考えたことは、ノートに手で書く
うちの施設の入居者は平均年齢89歳です。100歳時代はもうすぐ来ます。定年で退職しても、第二の人生を、目標を持って努力して生きることが必要ですね。そのためには仕事をするのが一番です。仕事をしなくても人とコミュニケーションをとる、体を使う、よく歩く。私は考えたことをPCではなく、ノートに手で書きます。頭と手を使うといいですよ。
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