なぜ三菱UFJやTBSはIOWNを選んだのか? ソニーのキーマンが明かす「光のAI基盤」(1/2 ページ)
NTT川添氏に続くIOWNインタビュー第2弾。ユースケースWGを率いるソニーグループの伊東克俊氏に、技術検証から「事業合理性(顧客価値)」へシフトした最新動向を聞く。
スタジアムの駐車場にずらりと並んでいたはずの中継車が1台もない。何十キロも離れた東京のスタジオで、現場の熱気と数多くのカメラ映像がわずかなズレもなくモニターに同期する──。そんな時代がもうすぐやってくる。
次世代光通信技術「IOWN」が今、「世界陸上」での放送番組のリモート制作やメガバンクのデータセンターの分散化など、ビジネスの現場で本格利用が始まろうとしている。
設立7年目を迎えたIOWNを推進する国際組織「IOWN Global Forum」には、技術とユースケースに関する2つのワーキンググループ(WG=作業部会)が存在する。技術の実証にとどまらず、「いかにして企業の利益や顧客価値につなげるか」を追求してきたのがユースケースWGだ。
ユースケースWGを率いるソニーグループの伊東克俊Corporate Distinguished Engineerに、IOWNがもたらす新しいビジネスの形を聞いた。
技術の実証から「利益を生む現場」へ IOWNの顧客価値とは?
――IOWN Global Forumの活動も7年目を迎えましたが、その成果は。
ユースケースWGのリーダーとして年次総会や中間会議の場でこれまでの成果についてスピーチをしてきましたが、私たちが一貫して追い求めてきたのはIOWNの事業合理性です。
つまり顧客価値をどう実現するか。そのために「テクノ・エコノミック・アナリシス」(技術経済分析)といった手法を導入し、オーストラリアのシドニーで開いた4月の年次総会あたりから具体的な価値が見えてくるようになりました。そこで今度はその価値をスケールする方向に持って行こうと考えました。
――「スケールする」というのは具体的にはどういう意味ですか。
IOWNをAI時代の新しい情報通信インフラにしていくということです。私たちはそれを「AI Computing Continuum」(AIコンピューティング・コンティニュウム)と呼ぶことにしました。
コンティニュウムとは特定のコンピュータシステムではなく、ドメイン(管理範囲)を超えて、クラウドやエッジ、GPU(画像処理半導体)やCPU(中央演算処理装置)など全ての計算リソースをリアルタイムにつなぎ、プラットフォームとして一つの集合体にしていくことです。これからフィジカルAIの時代が来れば、ロボットなどの操作はエッジ側やオンプレミスで担わなければならなくなるからです。
データセンターから自動車まで 業界の壁を越えて広がるオープンな連携
――そうしたスケール化を促すために、どんな施策をとろうとしていますか。
大切なのはエコシステムをつくることです。そのために私たちもデータセンターのオープン化を促す国際組織「OCP」(Open Compute Project)と提携しました。モビリティ分野では5G(第5世代通信システム)を自動車に活用しようとしている「5GAA」(5G Automotive Association)やコネクテッドカーを推進する国際組織「AECC」(Automotive Edge Computing Consortium)と協業することにしました。
モビリティ分野でIOWNを活用する考えは、IOWN Global Forumが発足した当初からありましたが、それぞれユースケースについて優位性を考えながら取り組んできました。今後は産業分野のいろいろな団体と組むことで、新しい情報通信インフラの構築を目指していきたいと考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
NTT「IOWN構想」に世界が動き出した 成否を握る“ブレークスルー技術”とは?
NTTが提唱する「IOWN構想」では2030年をメドに伝送容量を現在の125倍、遅延を200分の1、電力消費を100分の1に抑える計画だ。飛躍期を迎えたIOWNの歩みと、米南部ダラスで開かれた推進組織のメンバー会議の現地取材から今後の課題を展望する。
「6億台のコネクテッドカー」動かす光技術 IOWNは欧州のデータセンター危機を救うか?
生成AIの需要爆発で欧州データセンターの空き容量が逼迫する中、NTTが提唱する次世代光技術「IOWN」が脚光を浴びている。電力危機を打破する切り札として期待が高まる光通信革命の最前線を、オランダ現地取材から追う。
「遅延なきネットワーク」ソブリンAIの鍵に NTT川添氏が語る「IOWN」実装後の社会
次世代光通信技術「IOWN」が、机上の概念検証(PoC)を越え現実空間を動かす「フィジカルAI」の実装フェーズへ突入した。オランダでの年次中間会議を受け、NTTの川添雄彦氏にインタビューした。米中テックに対抗し主権を守る「ソブリンAI」の基盤としての勝算など、光インフラの現在地と社会実装の展望を聞く。
「サムスンが消えた」独IT見本市IFA 家電王国・日本の消滅と、中国“独り勝ち”の地殻変動
欧州最大の家電展「IFA」取材20年目の筆者が目撃したのは、かつての主役・日本勢の衰退にとどまらず、絶対王者サムスンまでもがメイン会場から姿を消す構造変化だ。代わりに会場の4割を占拠したのは、生成AIやEV、700万円の有人ドローン、スマートグラス同盟を率いる中国勢だった。機構技術が不要となったデジタル時代に、蚊帳の外へ追いやられた日本家電が「フィジカルAI」で一矢報いるための条件を現地から論じる。
欧州家電市場から脱落する日本メーカー──主役は韓国・中国製に
欧州最大の家電・IT見本市「IFA」。現地を取材したIT分野の調査・コンサルティング会社、MM総研の関口和一代表取締役所長がレポートする。
孫正義の「AI革命構想」と経営者へのメッセージ 日本企業に“最後のチャンス”
ソフトバンクグループ株主総会での孫正義氏の発言から、ASI時代を勝ち抜くために企業に求められる判断力と実行力を読み解く。

