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NTT「IOWN構想」に世界が動き出した 成否を握る“ブレークスルー技術”とは?(1/3 ページ)

NTTが提唱する「IOWN構想」では2030年をメドに伝送容量を現在の125倍、遅延を200分の1、電力消費を100分の1に抑える計画だ。飛躍期を迎えたIOWNの歩みと、米南部ダラスで開かれた推進組織のメンバー会議の現地取材から今後の課題を展望する。

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 次世代光情報通信基盤として期待される「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)の推進組織「IOWN Global Forum」が2019年10月末の設立発表からちょうど6年を迎えた。


NTTが提唱する「IOWN構想」では2030年をメドに伝送容量を現在の125倍、遅延を200分の1、電力消費を100分の1に抑える計画だ(写真提供:ゲッティイメージズ)

 NTTが提唱する「IOWN構想」では2030年をメドに伝送容量を現在の125倍、遅延を200分の1、電力消費を100分の1に抑える計画だ。10月に閉幕した「大阪・関西万博」でもNTTパビリオンなどでさまざまなIOWNのユースケースが紹介されるなど構想は着々と実現に向かっている。飛躍期を迎えたIOWNのこれまでの歩みと今後の課題を展望する。

 「生成AIなど大量の情報通信リソースが必要となった今、AT&Tはオープンな光通信技術に力を入れていく考えだ。IOWN Global Forumとは重要な関係を築けるに違いない」


米ダラス市内にあるAT&Tの本社(以下、筆者撮影)

 10月初め、米南部のダラスで開かれたForumのメンバー会議に米大手通信会社、AT&Tの研究所のジョン・ギボンズ副社長補佐が登壇し、同社が推す光接続の標準化組織「Open ROADM MSA」との協力関係についてこう語った。

 ダラスに本社を置くAT&TはVerizonと米国の通信市場を二分する巨大通信会社で、生成AI向けのデータセンター需要などをにらみ、通信ネットワークの光化を急いでいる。「ROADM」(ローダム)は光通信容量を需要に応じ遠隔から機動的に割り当てられる光伝送装置だ。


IOWN Global Forumが開かれた米ダラスのホテル会場

「IOWN」推進に動き始めた米IT業界 世界をリードできるか?

 ダラス会議にはテキサス大学ダラス校でOpen ROADMを研究しているアンドレア・フマガリ教授も登壇し、「IOWNが目指すオープンなAPN(All-Photonics Network)とOpen ROADMとの親和性は極めて高い」と述べ、米通信業界としてもIOWNを推進していく考えを示した。


オープニングで講演する米テキサス大学ダラス校のアンドレア・フマガリ教授

 テキサス大学ダラス校はさまざまな形でAT&Tの技術研究を支援しており、これまでNokiaやEricssonなど北欧の通信機器メーカーや日本、台湾などのアジアの通信会社や機器メーカーを中心に進んできたIOWN構想に、米国のIT企業も関心を示し始めたといえる。

 IOWN Global ForumはNTTが2019年5月に提唱した「IOWN構想」をもとに、NTT、インテル、ソニー(現ソニーグループ)の3社で2019年10月31日に設立を発表した組織だ。コロナ禍の2020年にオンラインで活動を始め、毎年春には年次総会が開かれている。メンバー全員が初めて一堂に会したのは2023年4月に大阪・関西万博会場の近くで開かれた第3回年次総会だった。以降、カナダのバンクーバーやスウェーデンのストックホルムで年次総会が開かれ、今回のダラス会議はその中間とりまとめ会議にあたる。

 Forumには現在、中心となるスポンサー会員が36社、一般会員が114社、学術・研究会員が22社・団体、アフィリエイト会員が3社の計175社・団体が名を連ねている。米国ではこれまでも作業部会などが開かれてきたが、今回、ダラスでメンバー会議を開いたのはデータセンター事業などで世界をリードする米国のIT業界を取り込むのが狙いだ。


IOWN Global Forumのメンバー数の推移(著者作成)

IOWN Global Forumのこれまでの歩み(著者作成)

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