月末に「600行の承認作業」が集中……「紙とハンコ」「現金手渡し」の経費申請を変えた、老舗メーカーの経理DX(2/3 ページ)
属人化しがちな経理業務。創業90年超のメーカーは、欠員をきっかけにIT導入を決断し、今では経費申請の約9割をAIが承認している。同社の“堅実な取り組み”に迫る。
月末に600行の承認作業が集中
経費精算の承認は、単純な確認作業にとどまらない。社内規定を把握した上で営業担当などの申請者とやりとりし、不備があれば指導もしなければならない。当時は派遣社員が担っていたが、経験がないと難しい面があった。かといって、社員にその仕事を任せるのも難しい状況だったという。
やり方を知る人がいなければ、後任に教えることはできない。担当者が代われば、業務の手順は新しい担当者の中にだけ残っていくことの繰り返しだ。
加えて、業務量の負担も重かった。TOKIUMによると、クラフツでは毎月500〜600行に及ぶ承認作業が月末に集中し、月次決算とも重なっていた。石黒氏は以前から、RPA(定型作業を自動化するソフトウェア)などで業務を自動化する仕組みを作りたいと考えていた。
そこで目を付けたのが、承認作業をAIが代行するサービスだ。導入済みの経費精算システム上で利用でき、社内規定を「ルール」としてAIに覚えさせれば、承認の基準が人に依存しなくなる。同社はまず、規定の大枠をAIのルールに落とし込み、テストを経て運用を始めた。
経費申請の約9割をAIが承認 工数8分の1に
現在は、石黒氏とAIが同じ承認ステップに入り、どちらかが承認する仕組みになっている。約9割はAIが承認し、石黒氏は念のため確認する程度だという。
導入したサービスには差し戻しの機能もあるが、同社はあえて使っていない。AIが不備のコメントを付けると、その時点で申請者が気付き、自分で直して再申請するためだ。多いのは、記載すべき項目の記入漏れ。石黒氏が確認する頃には、すでに修正されて再提出されていることが多いという。
紙の時代は、経費精算と銀行記帳で担当者1人分の業務が埋まっていた。システム化とAIの導入により、担当者の業務を少なくとも半分削減できた。
「承認だけを取っても、工数は8分の1ぐらいになっている」と石黒氏は語る。TOKIUMの発表でも、毎月16時間かかっていた承認作業が2時間に短縮した。
導入当初は、AIに任せて大丈夫なのかという空気も社内の一部にはあったが、今ではAIがチェックするのは当たり前になったという。
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