ぴあ矢内社長が米国で見た球体劇場「スフィア」とAI時代のエンタメ 「最後に残るのは……」
「とぶ!ぴあ」が復刊する中、映像、音楽などクリエーティブの世界にもAIが席巻してきている。AI時代のエンタメとは?
ぴあ矢内廣社長 1950年1月、福島県四倉町(現いわき市)生まれ。中央大学法学部在学中の1972年に雑誌「ぴあ」を創刊。1974年にぴあ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。日本初のオンラインチケット販売サービス「チケットぴあ」を1984年にスタートさせた。2003年、東証1部(現プライム市場)上場を果たす(9月2日午後、東京都渋谷区 米岡佑輔撮影)
「とぶ!ぴあ」が復刊する中、映像、音楽などクリエーティブの世界にもAIが席巻してきている。AI時代のエンタメとは?
AIはもっともっと普及して、エンタメの世界にも広がるでしょうね。当たり前のようにみんなが使う時代がそんなに遠くなく来るんだろうなと思います。実は先日、米ラスベガスに行って、「スフィア」を見てきました。
ラスベガスで見た衝撃 AI時代のクリエイティブ論
ラスベガスの「スフィア」とは、巨大な球体(高さ約112メートル、幅約157メートル)の外壁も内壁も全体がLEDスクリーンで、超高解像度の映像が球体全体に映し出される。球体の内側は音響、振動を伴う演出効果などで、観客は没入感のある醍醐味(だいごみ)を映画、コンサート、スポーツ観戦などで味わうことができる。今、世界中で注目されている
「スフィア」では、バックストリート・ボーイズ(米国のボーカルグループ)のコンサートを見てきました。今まで行った人からいろいろ聞いていましたが、言葉で聞くのと、実際に自分が体験したのとでは全く違う。
デジタル技術を駆使して、あの巨大球体の内側に映像が映し出されて、コンサートが行われるわけです。目の前にあるのは大きなロケットの発射台なんです。
いよいよカウントダウンが始まり、ゼロになると天井が開き、轟音(ごうおん)とともにロケットが発射されます。われわれの席もブルブルと震え出して、会場全体が宇宙空間の中に入っていくんです。そしてコンサートが始まります。圧巻です。ただ、後でよく考えてみると、同じような映像が今後どんどん作られて、いずれ驚いていたものが当たり前の時代になるんだろうな、とも思いました。
ラスベガスで前日には、人間のアクロバットや大道芸で世界的に知られるサーカスの「シルク・ドゥ・ソレイユ」のショー『O』を見たという
私は今回で3度目ですが、アナログの集大成みたいなステージです。もう28年間もやっているんですけど、毎日満席だそうです。最後はああいうアナログのステージ芸術がやっぱり残ると思うんですよ。AIはどんどん進むし、それがいつか当たり前になるんだろうと思うんですね。それに比べて生のものは、やっぱりそういうことに左右されずに当たり前に残っていくんだろうなっていう感じがしますね。
AI時代に問われる「作り手の思い」
瞬く間にイラストをデザインしたり、動画や楽曲まで生成したりするAIの飛躍的な効率性についてはどう考えるか
AIを使うと、簡単にうまくできちゃうわけですよね。効率性はAIは得意ですね。でも結局最後の最後まで残るのは、AIに何を作らせようとしているのか、というそこの部分ですよね。
映画でも芝居でもなんでもそうだと思いますが、その作者の思いみたいなものが一番大事で、AIにすぐさま自分が作りたいものを出してくれと言っても出てこないと思うんです。
一方、自分が伝えたいと思っていることをどういう方法で伝えたら一番伝わりやすいのか、というシミュレーションを繰り返し繰り返しやることができるという意味では、AIによって作品を創る時間がいっぺんに短縮できるんじゃないかと思いますね。繰り返しですが、やはり一番大事なのは作り手の思い、こういうのを作りたいという気持ちの部分です。その思いの核がないといくらAIの技術が進化してもしようがないでしょうね。
次回からは、雑誌「ぴあ」、多くの映画監督の登竜門となった「ぴあフィルムフェスティバル」、チケットぴあ、大規模アリーナ開設など広範にエンタメインフラを次々と構築してきた源流を辿(たど)っていく
(聞き手 近藤豊和)
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