+D Style 本格焼酎ぐびなび:第11回 全ては出会いの一口の衝撃から始まった

syotyu

昨年の6月から始まった連載もあっと言う間に第11回を迎えた。毎回読んでくださっている人に感謝感謝である。さて、今回はちょっと趣向を変えて、自分のことを書かせてもらおうと思う。

そもそも筆者が焼酎を好きになったのは、もう6年くらい前になるが、雑誌『dancyu』(プレジデント社)の編集部にいる先輩と一緒に『きばいやんせ』(第1回、第3回を参照)に初めて行ったことがきっかけである。その時に飲んだ焼酎が『村尾』に『佐藤・黒』。どちらかと言えばワイン、日本酒党だった筆者は、それほど焼酎の知識もなく、「お酒に人の苗字がついているなんて変わっているなぁ」なんて思ったことを鮮明に覚えている。

photo 『宝山』『佐藤』『朝日』の東京農業大醸造科トリオ

お湯割りで一口、ロックで一口飲んだ時の衝撃は忘れられない。「芋の持つおおらかさ」と「バナナを思わせるようなほのかな甘み」、繊細さと豪快さを併せ持つ稀有な酒だと思った。そして第3回でも紹介した「地鶏のもも焼き」と一緒に味わい、見事に一目ぼれ。「焼酎ブームの到来」をちょっと早めに感じ取ったのだった。

それからすぐ、自分の勤めていた出版社での会議に、「焼酎」を題材にした本の企画を出した。これが2002年5月に出版された『旨い!本格焼酎』である。これは『dancyu』をはじめ、様々な雑誌で幅広く執筆されている、酒ライターの山同敦子さんに書いていただいた。

『旨い!本格焼酎』で伝えたかったのは「酒」そのものの魅力だけではなく、作り手たちの「人」の魅力であった。1週間の取材で鹿児島、熊本、宮崎をまわり、『村尾』『佐藤』『富乃宝山』『百年の孤独』などを作り出してきた蔵元をめぐった。そして、酒づくりだけでなくその人の半生に触れた。やはり酒は「人」がつくるもの。これらの酒を飲むたびに、蔵人たちの顔が思い出されるようになった。

また、何かあるたびに鹿児島に赴くようにもなった。前述の『きばいやんせ』の親方、谷ヤンは焼酎の本を出すことを告げた時にも、とにかく自分の目で見て、感じてくることが大事だと熱弁をふるっていた。

そうなのだ。どうしてもお酒の文章などを編集したり、書いていたりすると、酒造りの技術ばかりに目がいってしまいがちで、実際、現地の蔵人や生産農家の人々が、どういう思いで作っているのか、また、地元の人はどんな気候で、どんなつまみで、どんな飲み方をしているのかということが、なかなか見えてこなくなってしまう。

しかしだいも、自ら足を運び、作り手や地元に触れたことが自分の焼酎感を大きく変えたというか、ただ、美味しい、美味しくない、の判断をするだけではなく、焼酎文化そのものに触れたいと思うようになったのだろう。

また、この一連の取材の経験を自分の形にしようと思い、取材後すぐに焼酎アドバイザーの資格を取得した。将来は焼酎Barを自分でやってみたいとかなり本気で思っている。

さて、年も明け、それぞれの芋焼酎の蔵は、やっと仕込みの期間を終えて、あとは出荷を待つばかりとなっている。先日「佐藤」の佐藤社長と話したところ、今年の芋の出来はなかなかよかったらしい。今年も一年間、存分に焼酎を楽しめそうだ。

本年もよろしくお願い申し上げます。

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著者紹介

橋本 裕之(ハシモト ヒロユキ)

有限会社デジほん社長 SSI認定焼酎アドバイザー。

株式会社ダイヤモンド社で編集者として『旨い!本格焼酎』(著・山同敦子)の企画、編集などに携わる。また、モバイルサイト情報誌『iして! ケータイサイトの歩き方』の編集統括を務めた以降はモバイル業界に関わるようになり、株式会社ドワンゴを経て、2005年6月に独立し有限会社デジほんを設立。デジタル、アナログを問わず、コンテンツを広くプロデュース、運用している。最近ではスケート界の裏を深くえぐった『愛するスケートに何が起こったのか?』(著・渡部絵美)を手がけている。


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