コラム
» 2007年10月19日 12時17分 公開

「ブレイブ ワン」+D Style 最新シネマ情報

暴漢に襲われ恋人を失った悲しみから拳銃を手に入れ、街に巣食う犯罪者たちを次々と射殺していく。彼女のとった行動は本当に正しいのか? ラストに疑問が残るが、一級の社会派作品に仕上がっている。

[本山由樹子,ITmedia]
photo (C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.

 果たして、彼女のとった行動は本当に正しいのか?

 ジョディ・フォスター演じるラジオパーソナリティーのエリカは、ある夜、暴漢に恋人を襲われるという悲劇に見舞われる。恋人を失った悲しみから立ち直ることができず、犯人を逮捕できない警察とその対応にイライラし、自ら夜のニューヨークに繰り出す。やがて拳銃を手に入れたことから、街に巣食う犯罪者たちを次々と射殺していく。それが、ニューヨークの仕置人として注目を浴びるようになるが……。

 相手が極悪人とはいえ、エリカの行動は決して許されるものではない。立派な犯罪行為だ。それでも、我々がエリカに対して共感を抱くことができるのは、彼女自身も被害者だから。愛する人を目の前で殴り殺されたばかりか、自分も意識不明の重傷を負ってしまう。銃による復讐によってしか埋めることのできないその喪失感は、十分に理解できる。

 エリカにとって、ニューヨークというのは心休まる街だった。しかし、事件後、エリカの世界観は一変してしまう。ちょっとした物音にも反応し、誰かに襲われやしないかと常に背後を気にするように。仕事へ救いを求めるも、言葉に詰まったり、ついつい感情的になったり。エリカが勇気を振り絞って部屋の外に出るシーンは、不安定なカメラワークで表現。こういった演出の工夫で、見ているこちらはエリカの心理状態をすぐに察知し、理解し、そして同情を寄せていく。

 テレンス・ハワード(「クラッシュ」「ハッスル&フロウ」)演じる刑事との、恋愛にも似た友情物語もうまく絡み合い、一級の社会派作品に仕上がっている。

 ただし、それはラスト10分前まで。えっ、なに、なに、どうして、それはないんじゃないの!? と突っ込みの1つや2つも入れたくなるような展開に、緊張の糸がプッツリ切れてしまい台無し。この結末を選んだことに対しては、悩むというか、失笑というか、賛否両論あってもしかたがない。登場人物に感情移入できるだけのクオリティとパワーがあるだけに、非常に残念だ。

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(C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.

ブレイブ ワン

監督:ニール・ジョーダン/製作:ジョエル・シルバー、スーザン・ダウニー

出演:ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード、ナビーン・アンドリュース、ニッキー・カット

10月27日(土)よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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