そしていよいよ最後のプログラム、スキッドパッドへ。
スキッドパッドとは、定常旋回ができる円状のコースです。
ステアリングを一定角度に安定させ、スピードを調節しながらコースアウトしないように円形コースを旋回する、となんだか聞いただけではピンとこないトレーニングなんですが、簡単に言えば円形のコースをぐるぐる走るだけ。
簡単そう?!いえいえ、とんでもない!
実はこの路面、ウエットコンディションに設定されています。濡れているんです。おかげで路面はツルツル状態、お風呂のタイルのよう。そこをハンドル切った状態で走るんですから、あっという間にアンダーステア!!
アンダーステアとは、コーナリング中に車が遠心力に負けて、ドライバーが意図するよりも外側へと走行ラインが流れてしまう状態をいいます。コーナーを飛び出してしまう事故のほとんどは、このアンダーステアで起こります。原因はズバリ、スピードの出しすぎ。そこで慌ててハンドルを切れば、今度はハンドルを切りすぎてしまう状態、(オーバーステア)になり、車体が不安定になるか、ひどいときにはスピンをしてしまいます。
さて、スキッドパッドのレッスンでは2種類のタイヤの性能を比較できます。スクールカーは佐藤浩一さんのダンディなCMでお馴染、トヨタのマークX。1台は「ポテンザ RE050」をタイヤにチョイス。言わずと知れたスポーツライン“ポテンザ”の中でも、ウエット路面でのグリップに優れたモデルです。そしてもう1台にはスタンダードなタイヤの「スニーカー」。
ノリやすい私、佐藤浩一バリに眉を寄せて、渋く乗り込みました。気分は敏腕部長です。
まずはRE050から。
ある程度スピードが安定したところで、インストラクターから「もっと踏んでみましょう!」と指示が出るのですが、どこまで踏んでも安定性はバツグン!
さすが雨の多いヨーロッパで鍛え抜かれたスポーツタイヤ。この日の「イマイ・メモ」にも「限界高〜い!!」と殴り書きがしてあったほど。よっぽど踏まないとその限界を超えません。スピードを上げてもタイヤが路面にしっかりと食いつき、イメージした走行ラインを守ることができます。
続いてスニーカーです。
あれあれ?! 踏めば踏むほど不安定に……走行ラインがどんどん外にはみ出して行きます。「もっとスピードを上げましょう!」とのインストラクターの指示に従う私なのですが、踏めば踏むほど、どんどんとラインは外へ……こりゃイカン! と以前の走行ラインに戻ろうとすると、今度はオーバーステア気味に! 後輪がズルっと滑っていくのがわかります。
そこで後輪の滑りだした方向にハンドルを切って調整しますが(この動作がカウンターステアです)、ハンドルの戻しが少しでも遅れてしまうと、クルマの挙動があっという間に乱れてスピンしてしまうことになります。
アクセルワークとハンドルさばきでなんとかスピンは免れましたが(っていうと運転が上手いみたいですが、これも氷上ドライブ講習などの“コソ練”の賜物です……てへ)、同じブリヂストン製のタイヤなのに、ここまで運動性能が違うとは、いやはやオドロキです。
スニーカーとRE050では、1本あたり4〜5千円の差があるそうですが、やはりそのお値段の違いは結果に現れるんですね。納得です。
とはいえ、個人的な感想としては、スニーカーでカウンターステアを当てながら走る方が、トレーニングとして面白かった!! あと50周くらいしたいほど!! レッスンを通して一番楽しいプログラムでした。……ただこれは、あくまでもクローズドコースでの感想です。一般道を走るなら、限界の高いタイヤの方がイイに決まっています!
修了式を終え、帰る道々、真剣に考えました。
黒くて丸いタイヤは、1本あたりはがき1枚の接地面でクルマを支えています。
どれだけ高級なクルマに乗っていたって、クルマの安全性能が優れていたって、タイヤのメンテナンスができていなければ安全装備は十分とは言えません。
クルマは命を乗せて走っているのです。それを支えるのはタイヤです。
ボディの美しさよりも、傷よりも、もっと大切なことがある。それを忘れないようにしましょう。
私は、クルマの事故を減らしたい。愛車のタイヤの状態を把握し、ますます安全なカーライフを送ってくださることを祈っています。
今井優杏(イマイ ユウキ)
2006年にレースクイーンを引退し、レースを通じて知ったクルマの素晴らしさを伝えたい! とモータージャーナリストに転身。また、MCとしても、モータースポーツ関連イベントを中心に幅広く活動中。
愛車はFIAT・バルケッタ(赤)。ラテンのクルマを愛する情熱系。
クルマは所有も運転もJOIA(喜び)。もっと楽しみましょう!!
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