忘れちゃいけない、タイヤの事実――プロに教わる“タイヤの安全”完結編+D Style モテるクルマの選び方(2/2 ページ)

» 2008年05月12日 16時26分 公開
[今井優杏,ITmedia]
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photo これが一番楽しかったスキッドパッド! ああ、朝から晩まで走りたい……けど酔いそう。ここを練習するだけで、運転は間違いなくうまくなると思います

 そしていよいよ最後のプログラム、スキッドパッドへ。

 スキッドパッドとは、定常旋回ができる円状のコースです。

 ステアリングを一定角度に安定させ、スピードを調節しながらコースアウトしないように円形コースを旋回する、となんだか聞いただけではピンとこないトレーニングなんですが、簡単に言えば円形のコースをぐるぐる走るだけ。

 簡単そう?!いえいえ、とんでもない!

 実はこの路面、ウエットコンディションに設定されています。濡れているんです。おかげで路面はツルツル状態、お風呂のタイルのよう。そこをハンドル切った状態で走るんですから、あっという間にアンダーステア!!


photo 今話題のパンクしても走行できるタイヤ「ランフラットタイヤ」の実験。な、なんとタイヤにドリルで穴、開けてます!!! でもぺったんこになることはありませんでした。こんなこと、やってみたくてもできない実験ですよね。なんかトクした気分

 アンダーステアとは、コーナリング中に車が遠心力に負けて、ドライバーが意図するよりも外側へと走行ラインが流れてしまう状態をいいます。コーナーを飛び出してしまう事故のほとんどは、このアンダーステアで起こります。原因はズバリ、スピードの出しすぎ。そこで慌ててハンドルを切れば、今度はハンドルを切りすぎてしまう状態、(オーバーステア)になり、車体が不安定になるか、ひどいときにはスピンをしてしまいます。

 さて、スキッドパッドのレッスンでは2種類のタイヤの性能を比較できます。スクールカーは佐藤浩一さんのダンディなCMでお馴染、トヨタのマークX。1台は「ポテンザ RE050」をタイヤにチョイス。言わずと知れたスポーツライン“ポテンザ”の中でも、ウエット路面でのグリップに優れたモデルです。そしてもう1台にはスタンダードなタイヤの「スニーカー」。


photo これがランフラットタイヤの断面。こうやって持ってみただけでも、すっごくカタいのが分かります

 ノリやすい私、佐藤浩一バリに眉を寄せて、渋く乗り込みました。気分は敏腕部長です。

 まずはRE050から。

 ある程度スピードが安定したところで、インストラクターから「もっと踏んでみましょう!」と指示が出るのですが、どこまで踏んでも安定性はバツグン!

 さすが雨の多いヨーロッパで鍛え抜かれたスポーツタイヤ。この日の「イマイ・メモ」にも「限界高〜い!!」と殴り書きがしてあったほど。よっぽど踏まないとその限界を超えません。スピードを上げてもタイヤが路面にしっかりと食いつき、イメージした走行ラインを守ることができます。


photo 通常のタイヤは、力を入れればグニッと曲がるくらいの柔らかさ

 続いてスニーカーです。

 あれあれ?! 踏めば踏むほど不安定に……走行ラインがどんどん外にはみ出して行きます。「もっとスピードを上げましょう!」とのインストラクターの指示に従う私なのですが、踏めば踏むほど、どんどんとラインは外へ……こりゃイカン! と以前の走行ラインに戻ろうとすると、今度はオーバーステア気味に! 後輪がズルっと滑っていくのがわかります。

 そこで後輪の滑りだした方向にハンドルを切って調整しますが(この動作がカウンターステアです)、ハンドルの戻しが少しでも遅れてしまうと、クルマの挙動があっという間に乱れてスピンしてしまうことになります。


photo プログラムが終了したら、バスで教室に戻る前にブリヂストンのテストコースを案内してくれます。ちょっと加速したと思ったら!!バンクを駆け上がっていく〜〜〜!! きゃ〜〜〜!! もっとやって〜〜!! 観光バスのフロントガラスから直前に迫るバンク……お客さん、大歓声

 アクセルワークとハンドルさばきでなんとかスピンは免れましたが(っていうと運転が上手いみたいですが、これも氷上ドライブ講習などの“コソ練”の賜物です……てへ)、同じブリヂストン製のタイヤなのに、ここまで運動性能が違うとは、いやはやオドロキです。


photo 修了式です。大尊敬するモータージャーナリストでタイヤセーフティのチーフインストラクター、清水和夫さんから修了証をいただきました

 スニーカーとRE050では、1本あたり4〜5千円の差があるそうですが、やはりそのお値段の違いは結果に現れるんですね。納得です。

 とはいえ、個人的な感想としては、スニーカーでカウンターステアを当てながら走る方が、トレーニングとして面白かった!! あと50周くらいしたいほど!! レッスンを通して一番楽しいプログラムでした。……ただこれは、あくまでもクローズドコースでの感想です。一般道を走るなら、限界の高いタイヤの方がイイに決まっています!


photo 参加メンバーと一緒に撮った写真と、修了証。また参加したいな

 修了式を終え、帰る道々、真剣に考えました。

 黒くて丸いタイヤは、1本あたりはがき1枚の接地面でクルマを支えています。

 どれだけ高級なクルマに乗っていたって、クルマの安全性能が優れていたって、タイヤのメンテナンスができていなければ安全装備は十分とは言えません。

 クルマは命を乗せて走っているのです。それを支えるのはタイヤです。

 ボディの美しさよりも、傷よりも、もっと大切なことがある。それを忘れないようにしましょう。

 私は、クルマの事故を減らしたい。愛車のタイヤの状態を把握し、ますます安全なカーライフを送ってくださることを祈っています。

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筆者プロフィール

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今井優杏(イマイ ユウキ)

2006年にレースクイーンを引退し、レースを通じて知ったクルマの素晴らしさを伝えたい! とモータージャーナリストに転身。また、MCとしても、モータースポーツ関連イベントを中心に幅広く活動中。
愛車はFIAT・バルケッタ(赤)。ラテンのクルマを愛する情熱系。
クルマは所有も運転もJOIA(喜び)。もっと楽しみましょう!!


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