分解クリーニングで無事露出計も動くようになったPENTAX SP。互換性のある部品はPENTAX SPFから拝借、ついでに軍艦部のカバーも、見た目が綺麗なSPFのものに取り替えた。プリズム部の頭にホットシューがあるが、内部に接点がないので、ただのアクセサリシューにしかならない。しかし個人的にフラッシュ撮影には興味がないので、なんの問題もない。
見た目はSPFだが機能的にはSPという、人に説明が難しいカメラが出来上がった。ねじ穴が一カ所違うが、まあいいだろう。メリットは、シャッターのロック機構が新たに使えるようになったことである。この機構は軍艦部のフレームにくっついているので、そのまま使うことができた。
ただ、巻き上げレバーとロック機構が近接しているので、巻き上げレバーが戻るときにこのロック機構の外郭とこすれて、少しロック方向に回ってしまうのが難点だ。よく見ると巻き上げレバーの外郭にもかなりこすれた跡があるので、これはSPFの構造的な問題なのだろう。
露出計の微調整は、後からでもできる。巻き取り側のパーツを外すと、外装に穴が空いていて、中の可変抵抗にさわれるようになっているのである。いろいろな光の具合の場所にカメラを向け、セコニックの露出計の値を睨みながら、適正値に合わせ込んでいく。そもそも露出計のタイプが違うのでリニアリティまでは合わないが、だいたい昼光では適正と思われる値に調整した。
レンズは以前から気に入っている、SMC-TAKUMAR 50mm/F1.4である。多少コーディングが黄色く変色しているということでジャンク扱いだったが、写りには問題ない。これでようやく、絞り開放でフォーカスが決められるようになるわけだ。
と思ったのだが、実際にはそう甘くはなかった。PENTAXのM42マウントレンズには、AUTO-MAN.の切り替えがある。AUTOにしておくと、シャッターを押した瞬間だけ絞りが閉じるわけだが、この機構に対応しているボディがPENTAX、というわけである。
しかしいざ露出を設定するためにレンズ部脇の「SW」スイッチを上に上げると、レンズ側の設定如何に関わらず、自動的に絞り値に設定されてしまうのであった。それはまあ実際に絞ってみなければ露出が計れないという「絞り込み測光」の理屈からすれば当たり前なのであるが、なにかこう「どうすりゃいいのよ」的な不条理を感じる。このあたりが、カメラの歴史とともにあるということなのだろう。
しかしまあ、なるべく開放目で撮れば、それほど問題ないとも言える。というわけで早速撮影である。これまでこのレンズではZENIT-E、Edixa Reflexで撮影してきたが、見た目的にはやはりPENTAXのボディが一番しっくり来る。
シャッターの「音」がいいのも、PENTAX SPの特徴だ。まるでテレビドラマの効果音で使われていそうな、いかにもなシャッター音がする。実際クイックリターン式一眼レフとしては世界初だったこともあって、昔からこのシャッター音が効果音で使われてきた可能性は高い。
実際に撮影すると、露出計はそこそこ正確なようだ。ただ、レンズ脇の露出スイッチを入れていない状態でも、露出計の針がセンターを示すのが困る。これは仕様でそうなっているそうだが、うっかりSWスイッチを入れ忘れていて「ああ、露出合ってるな」とシャッターを切ってしまうことがある。
後継機ではこれが紛らわしいということで、スイッチOFFの時は針が下がるように変更されたそうだが、カメラの進化というのはこうしたちょっとしたことが「売ったあとで初めて分かる」の繰り返しだったのだろう。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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