第3鉄 爆走ディーゼル特急「はまかぜ」で、余部鉄橋を訪ねる杉山淳一の+R Style(1/2 ページ)

» 2009年04月22日 09時34分 公開
[杉山淳一,ITmedia]

 兵庫県の日本海側にある温泉町、城崎。そこは大阪から特急列車で約3時間、京都から同じく約2時間半の好立地にある。関東で言えば、東京から特急で2時間半ほどの伊豆といったところだろうか。城崎温泉の人気は時刻表からも分かる。大阪からは特急「北近畿」が5往復と「はまかぜ」が3往復、京都からは特急「きのさき」が3往復が設定されている。冬のカニシーズンには臨時特急「かにカニはまかぜ」も走る。

 これら、いわば「城崎特急群」のうち「はまかぜ」について、JR西日本は2011年から新型車両を投入すると発表した。新型列車の投入は地元や利用者にとっては朗報だ。しかし鉄道ファンからは旧型車の引退を惜しむ声もある。現在の車両は国鉄から継承したキハ181系で、1968年から1972年までに製造された。実に車齢40年という古株で、現存する車両は「はまかぜ」用の26両のみ。今回は、最後の活躍を見せるロートル特急の魅力を紹介しよう(編集注:以下、写真はすべて2006年2月撮影です)。

キハ181系の特急「はまかぜ」

時速120キロで爆走する「ジェットディーゼル」

 大阪発城崎方面行きの「はまかぜ」は、09:36発(浜坂行)、12:05発(香住行)、18:05発(鳥取行)の3本。終点までの景色を楽しむなら09:36発か12:05発に乗りたい。大阪駅のホームには、他の列車とは異なる無骨な雰囲気のディーゼルカーが待っている。先頭車両はいかめしい顔つきで、運転台の背後からガリガリという音が聞こえるはず。これが走行用エンジンかと思ったら間違いで、照明や電子機器のための発電用エンジンだ。動力用エンジンは各車両の床下にあり、停車中はおとなしくしている。それでもアイドリングの音は大きく、電車とは違うな、と思うことだろう。

 室内もひと世代前のデザインである。約40年前のままではなく、一度リニューアル工事を施されているとはいえ、機能と合理性重視の昭和っぽさは健在。デッキと客室を仕切る扉は手動式だ。開閉時はロック部分がカチャカチャとうるさいし、ちゃんと閉めないと走行中にガタガタ鳴る。指定席を取るなら車両の中央、7番から10番あたりを窓口で希望しよう。眺望は海側がいい。山岳区間でも、日本海に出てからもこちらの景色がいい。

 発車時刻がやってきた。扉が閉まり、エンジンがぐぉうと音を立てて動き出す。東海道線を西へ。ここで早くもキハ181系ディーゼルカーは本領を発揮する。車齢40年の老体にムチ打って、複々線区間を時速120キロメートルで走り出すのだ。室内では分かりづらいが、各車両に搭載された500馬力のエンジンは、ジェット旅客機のごとくキーンという音を立てている。併走する各駅停車の電車を走行中に追い抜く場面も見られる。あちらは鈍行、こちらは特急だから当然だが、平成生まれの若造電車をロートルディーゼルカーが抜き去るのは痛快そのもの。姫路までの停車駅は三ノ宮、神戸、明石のみ。明石海峡大橋を眺めつつ、その走りを存分に楽しみたい。

 姫路から「はまかぜ」は逆向きに走り出し、播但線に進入する。同じく大阪発城崎方面行きの特急「北近畿」は福知山線経由、「はまかぜ」は播但線経由。所要時間は直行ルートで電車の「北近畿」のほうが短いから、ほとんどのお客は「北近畿」を選ぶだろう。「はまかぜ」は大阪発だが、実質的には神戸や姫路と城崎温泉を結ぶ列車だといえる。「はまかぜ」はここからの播但線の車窓も面白い。平野部から少しずつ高度を上げ、市川という名の川に沿って谷間に分け入る。古い路線だからトンネルが少なく、景色がよく見える。右へ左へとカーブしながら山を越えていくのだ。冬に乗ると、山陽から山陰にかけての風景の変化が強調されて楽しい。

複々線区間を爆走する(左)。播但線の車窓はのどかな風景(右)

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