見えてきた、電気自動車という選択肢:人とくるまのテクノロジー展(2/2 ページ)
ゴルフカートのようなクルマ――そうしたイメージを覆す、“普通な”電気自動車が3年後には普通に街中を走っているかもしれない。
これまでにも電気自動車は市販されているが、エネルギーを携行するために絶対必要なバッテリーの能力(とそれを原因とする航続距離、運動性能)が不足しており、オートイーブィジャパンの「ジラソーレ」のような小型のミニカーレベルにとどまっていた。しかし、あと3年もすれば通常の新車購入時の選択肢に、電気自動車が入ってきそうだ。
富士重工業は軽自動車「R1」をベースとした電気自動車「R1 e」を、既に東京電力の地域営業活動用コミューターとして納入、本格的な市販化に向けてのサンプリングを行っている。このR1 eはリチウムイオン充電池を動力源として、1回の充電で80キロを走行できる。航続距離そのものは決して長いと言えないが、家庭用の100ボルト電源でも充電可能なほか、バッテリーは7万キロのメンテナンスフリーを実現しており、市販車に必要な「エネルギーの入手しやすさ」と「耐久性」を手にしている。
「電気自動車の市販化ができるかどうかの決め手は、やはりバッテリーの性能。まだまだ改良する必要はあるが、リチウムイオン充電池ならば低価格化も含めて、イケるという手応えがある」(同社)
同様の手応えを得ているのが、三菱自動車だ。同社は軽自動車「i」(アイ)をベースにした電気自動車「iMiEV」を展示していたが、同社も今度年間3〜40台を電力会社や自治体などへ試験導入してゆき、2009年までに1000台を納入する計画だという。
R1 eとiMiEVに共通しているのは、自動車としての基本的なパーツは既存自動車から流用し、パワーユニットだけを交換することで電気自動車として成立させている点だ。電気自動車だからといって特別な部品(軽量なフレームなど)を開発することなく、電気自動車化することに目処がついたことは、電気自動車が市場で成功するために何よりも欠かせない「低価格化」に大きく貢献することを意味する。
「2010年には電気自動車を市販車として投入することを考えている。最終的には200万円を切れる価格設定にできれば」(同社)
今回の展示会で電気自動車の展示を行っていたのは、富士重工業と三菱自動車のみだったが、他社も電気自動車に無関心という訳ではない。日産自動車も小型高性能なリチウムイオンバッテリーの展示を行っており、意欲を見せている。
「ガソリン以外の動力源としては水素燃料電池などもあるが、まずは電気だと考えている。ハイブリッド車の開発は行っており、早ければモーターショーあたりでなんらかの形を見せられるかも知れない」(日産自動車)
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