日産の新型「ティアナ」が提案する“第3のセダン”像:+D Style News(2/2 ページ)
「セダンには3つのタイプがあるのではないか?」――モダンリビングコンセプトを軸にした初代モデルの意志を受け継ぐ新型「ティアナ」のアイデンティティーを、デザイナー齋藤欣一氏の言葉とともに探る。
「単に第一印象としての見た目のクラス感を求めるのではなく、実際にハンドルを握ったときの“安心感”や“優しさ”、長く使う上での“くつろぎ感”といったものを追求したデザインになっています。例えば、インストルメントパネルに採用されたソフトな素材のパッドは助手席の前方を優しく包み、安心感を演出します」(齋藤氏)。
温もりや優しさを感じさせるデザインで人を包み、くつろぎを与える――そんな“リビング空間”の提供が、今回の新しい試みだ。ただ、リラックスといっても、だらしなくなるための空間を作るわけではない。「キーワード的には、リラクシー(RELAXY)というものを考えました。これはリラックスとセクシーをかけ合わせた造語で、くつろぎつつも緩みすぎず、心地よい緊張感が伴うような空間を目指しています」(同氏)。
クロームで縁取られたメーターをはじめとするメタルパーツの輝きは、室内にメリハリを持たせ、またウェーブラインを描きつつ傾斜するセンターコンソールは、女性のくびれのような美しさが表現されている。こうしたエモーショナルなアクセントによって、“緩みすぎないリラックス空間”が演出されているように感じた。
ティアナの“第3のセダン”像
「セダンには3つの種類があるのではないかと考えているんです。1つ目は運転手がいて、後席にお客様が乗るという、セダンのベーシックなあり方です。2つ目はスカイラインのようにドライバーが主役のセダン。そして3つ目としてティアナが提案するのが、“一番の特等席が助手席”のセダンです。長く付き合ってきたパートナーを、精神的にも肉体的にも余裕を持って迎え入れる室内空間。成熟したカップルのゆったりのんびりを演出する、そんなセダンのあり方をティアナは目指しています」(同氏)
パートナーに対する“おもてなし”の空間。そのテーマは、ソファーのような座り心地のシートやアームレストといった装備だけでなく、“女性の目”を意識したデザインにも表れている。
「一番わかりやすい例としては、内装のカラーが挙げられます。一般的にベージュとよばれる内装色を設定していますが、このティアナのベージュ(シルキーエクリュ)は、社内ではヒノキという呼び方をしています。淡い黄色をベースに、水を吸う木の根の管のような、淡い緑が混ざった色です。内装としては、どちらかといえば赤みのあるベージュが採用されることが多いのですが、こうしたちょっとした色の違いに、女性のお客様はとても敏感です」(同氏)
女性をターゲットにした日産の車として思い浮かぶのは「マーチ」だが、こちらもカラーバリエーションの豊富さや、そのカラーリングに対するこだわりが徹底されていた。ターゲットの年齢層はマーチに比べ高くなるが、やはりティアナでも色に敏感な女性への配慮、“女性が乗り、運転する”という視点が重視されている。
初代モデルと同様に世界戦略モデルとしての使命をもつ新型ティアナは、販売数の面では中国がメインのマーケットになると予測されている。中国は今、国内外の自動車メーカーがこぞって戦略的なモデルを投入している激戦区だ。グローバルな視点、そして女性の視点と、さまざまな角度から煮詰められた新しいモダンリビングコンセプトで、新型ティアナは“第3のセダン”マーケットの開拓に挑む。
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