さまざまな「写真展」を随時案内していく本コーナー。オープンギャラリー1(品川)で、2015年12月24日から開催している「2016年キヤノンカレンダー展 石川 直樹 写真展:Encounter Nature 日本の風土」を案内する。
脇目もふらずに、ある目的地を目指す。ぼくの旅はそれとはまったく逆だ。もちろん、ある場所へ行くときは、漠然とした行き先だけは決めていく。あらかじめ想定している風景もないわけではない。が、それ以上の出会いがあるときこそが面白い。考えていたことがすべて覆されていくような旅が、ぼくは一番好きだ。予想していたものと違うものが出てくると、ある種の快感というべきか、身体が即座に反応し、シャッターを切る。
自分自身の生活についてもそういうところがある。目指すべきところへ向かっているつもりが、やむをえない出会いなどによって、想像とは異なる展開を余儀なくされる。それが結果的に自分の人生になっていく。だから、A地点に向かっている途中で、B地点の方が面白いと聞いたらそちらに行くし、C地点の方がいいよと言われたらC地点に行く。頑なにならず、柔らかく周囲の情報をできる限り咀嚼する。そうやってあらゆる変化を受け入れながら旅をして、写真を撮ってきた。
今回のカレンダーの写真についても、まさにそういうふうに旅をして、偶然を受け入れながら撮影した。だから、タイトルには「encounter」という言葉を使っている。ただ「会う」のではなく、出くわし、遭遇し、偶然見つけた風景ばかりで、すべての写真に自分自身の反応や驚きが含まれている。
旅とは、端的に言えばそうした「新しい世界との出会い」だと思っている。ガイドブックをなぞるスタンプラリーのような旅ではなく、自分が知っている範囲から一歩でも外に出て、知らないものを自分の目で見たい、と強く思う。
驚きに満ちた光景こそが、自分にとっては“絶景”だ。ただ、そうした風景は何も遠い彼方にのみあるわけではない。たとえば、南方熊楠は顕微鏡をのぞきながら、ファーブルは昆虫と向き合いながら、シートンはオオカミなどの動物と対話しながら、それぞれの絶景を見ていた。本当は自分の身近な場所にこそ、未知の世界があるとも思っている。
13枚の写真は、そんな思いを抱きつつも、一年を通じた日本国内の旅の中で撮影したものである。ぼくは北海道や沖縄など、日本列島の端のほうがたまらなく好きで、必然的にそういう場所の写真が多くなった。あえて地域のバランスをとるようなことはせず、encounterという言葉の通り、自分の出会いを軸に写真は選ばれた。
旅は一期一会である。写真は二度と出会えない風景を記録してくれる。これからも偶然を受け入れながら、旅を続けたい。あらためてカレンダーをめくりながら、さらなる出会いを期待してやまない。
写真展の詳細
名称 | 2016年キヤノンカレンダー展 石川 直樹 写真展:Encounter Nature 日本の風土 |
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開催期間 | 2015年12月24日(木)〜2016年2月4日(木) |
開館時間 | 10時〜17時30分 |
定休日 | 日曜、祝日 |
入場 | 無料 |
会場 | キヤノン S タワー1階 キヤノンオープンギャラリー1(品川) |
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