凸版印刷の子会社であるビットウェイが設立した「BookLive」は2月17日、クラウド型電子書籍ストア「BookLive!」をオープンした。
凸版印刷と、インテルの投資部門であるインテル キャピタルから第三者割当増資を通じた投資を元に立ち上がったこの新たな電子書籍ストアについては、「凸版印刷とインテルが共同で電子書籍ストア『BookLive!』の立ち上げへ」が詳しいが、購入した電子書籍コンテンツをクラウド上の「My本棚」で管理し、PCやスマートフォン、タブレット端末など最大3端末から利用シーンに合わせて読むことができるサービスとなっているのが特徴の電子書籍ストアだ。
「My本棚」は、専用のビューワアプリからアクセス可能で、PC向けに「BookLive!Reader for Windows」(32ビット版/64ビット版)が、Android端末向けにはストアと統合されたアプリ「BookLive!Reader for Android」が用意されている。
現時点での対応端末としてリストアップされているのは、NTTドコモのXperia(SO-01B)やLYNX 3D (SH-03C)、REGZA phone(T-01C)、GALAXY S(SC-02B)や、KDDIのIS03、SIRIUS α(IS06)、ソフトバンクのHTC Desire(X06HTII)、HTC Desire HD(001HT)、GALAPAGOS(003SH)、Libero(003Z)といったAndroid搭載スマートフォンのほか、GALAXY TAB(SC-01C)、DELL Streak(001DL)といったAndroid搭載タブレットで、iPhone/iPad向けにも今後アプリをリリース予定となっている。
ビューワの機能としてはフォントサイズの変更(5段階)、背景色や文字色の変更、縦書き/横書きの変更などが可能だが、漫画などの画像系コンテンツには適用できない。漫画系のコンテンツを読むにはよいが、活字系のコンテンツは、使用されているフォントがあまりきれいでないこともあって、やや可読性に欠ける印象だ。ちなみに、コンテンツの著作権保護にはサイファー・テックのDRM技術「CypherGuard」がビューワに組み込まれているとみられ、ビューワを起動した状態ではスクリーンキャプチャなどは行えない。
決済方法はクレジットカード(VISA/MASTER/JCB)のほか、ビットキャッシュの「Bitcash」が利用可能で、近日中にWebMoneyに対応するという。また、独自のポイントサービスを用意しており、プリペイドでポイントを購入し、それを使って決済することもできる。
プリペイドでポイントを購入するメリットは2つあり、1つはボーナスポイントが得られる点だ。ポイント購入メニューには「BookLive! 1000」「BookLive! 3000」「BookLive! 5000」の3種類が用意されており、それぞれを購入した場合の付与ポイントは1100、3400、6000ポイント。電子書籍コンテンツを直接クレジットカードなどで購入するよりも、あらかじめ購入したポイントを利用する方が得になるというわけだ。ただし、付与されたポイントの有効期限は、ポイント付与月の5カ月後の末日――例えば1月20日にポイントを購入した場合、6月30日まで有効――と決められているほか、上限が10万ポイントとなっている。
もう1つのメリットは、ポイントで決済する場合はAndroidアプリから直接購入できる点にある。逆に言えば、BookLive!Reader for AndroidからクレジットカードやWebマネーで決済は行えず、ポイントで決済しない場合はWebブラウザ上で決済した後、それをMy本棚で開いて同期するような流れとなる。
BookLive!のコンテンツはグループ会社のビットウェイが取り次ぐ形でラインアップをそろえている。各ジャンルの作品点数を調べてみると以下のとおり6710点で、ハーレクイン小説が全体の3割程度を占めていることが分かる。また、出版社別では講談社が4997点と突出している。
ジャンル | 2月18日時点の作品点数 |
---|---|
少年マンガ | 131 |
少女マンガ | 310 |
青年マンガ | 398 |
女性マンガ | 298 |
TLマンガ | 33 |
文学 | 824 |
ミステリー | 710 |
歴史・時代 | 277 |
SF・ファンタジー | 80 |
ライトノベル | 85 |
ビジネス・IT | 405 |
ノンフィクション | 214 |
趣味・生活 | 294 |
雑学・エンタメ | 485 |
教育・文化 | 158 |
ハーレクイン小説 | 2008 |
eBook USERでは「TSUTAYA GALAPAGOS」と「Reader Store」の“蔵書点数”を毎週定点観測しているが、2月11日時点での両店のラインアップはそれぞれ2万3195点、1万3359点だ。BookLive!の6710点というラインアップは、これらと比べても見劣りする数字であるのは明らかだ。ちなみに、1月20日のBookLive!設立発表会では、「サービスイン時のラインアップは、コミック・小説・実用書を中心に約3万点、雑誌や写真集などのジャンルを拡充しながら2011年春までに10万点に拡大する意向」であるとしており、大きなかい離が見られる。既存サービスにない特徴を持っているだけに、コンテンツ面では少々残念な門出となった。
現在、BookLive!ではオープンを記念してキャンペーンが2件展開されている。1つは、2月末までの「期間限定ポイントバックキャンペーン」。講談社のコミック・書籍を1冊購入するごとに50ポイントがポイントバックされる(1ポイントは1円)。
もう1つのキャンペーンは、人気作品の第1巻を無料提供するというもの。現在は、「クレヨンしんちゃん」(臼井儀人)、「Fate/stay night」(西脇だっと、TYPE-MOON)、「ベルサイユのばら」(池田理代子)、「サプリ」(おかざき真里)、「こんな話があって いいのか!」(えびなみつる)の1巻が無料公開されている。こちらは3月17日まで週替わりで作品が変わっていくという。
BookLiveの資本金は16億円。ちなみに、ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が電子書籍共通配信プラットフォームを提供する目的で2010年11月に事業会社化した「ブックリスタ」は、資本準備金を含む出資金の総額で4億9000万円。資本力では巨大なプレイヤーとなるだけに、今後の進撃が期待される。同社は今後、アプリのプリインストール端末の拡大による利便性向上を目指すとともに、雑誌コンテンツの配信や、アプリのEPUB対応を進める考えだ。
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